閑話 カユタヤ闇組織
「オヤジ、シャルトの首都に依頼遂行に出たやつら、全員捕まっちまってた!」
「何だと!?」
「さっきルーデまで様子見に行った奴が戻って来たんだが、泊るって連絡来た宿で捕り物があって、全員捕まったって。聞きに行った奴も仲と疑われて、慌てて逃げ帰ったらしい」
「チッ、いい依頼料だったのに、残金がもらえないどころか返金を要求されるぞ。それより、ウチが失敗したって裏ルートに流れるのは面倒だな。理由付けて期限を引き延ばしてやるから、手下集めてお前が行ってこい。しくじるんじゃねえぞ!」
「その必要はございませんよ」
「誰だ!? どこに居やがる!?」
「気配も探れないとは、何ともお粗末な方々ですわね。私は、あなたたちが狙った方の友人と言えばお分かりで?」
「あいつ、尾けられやがった」
「臭い物は、元を絶ってきれいにしませんとね」
「そいつは残念だったな。裏稼業も信用第一なんでな。依頼主はとある奴の頭の中にしかねえよ。元にはたどり着けねえ」
「たどり着けますよ。たとえ死んでいても、記憶は読めますから。どうせシャルト共和国からの抗議で、職を追われた誰かでしょうけど」
「…俺たちを殺して、全員の記憶を読む気か?」
「はい。自供などでは嘘か本当か分かりませんから、素直な死体に聞くのが一番です」
「…本当に死体から記憶が読めるのかよ」
「ええ。首都ルーデの宿に様子を見に来られた方は、尾行されたわけではございませんよ。ゴルローさんという方の記憶からここのことは読み取り済みで、一網打尽にするために様子を見に来た方が戻り着くのを待っていただけですから。さっさと死んで記憶を渡して下さい。早く元を絶ちたいので」
「オヤジ、やべえよ。相手が妖精じゃ、手も足も出ねえ」
「馬鹿野郎! まだ妖精と決まったわけじゃねえ。それに、妖精に敵わねえとも決まってねえ!」
「では、どうぞお試しになって。ほら」
「……そんな鳥みてえな小せえなりで人間様に楯突こうってか。人ってのはな、すげえもんが作れるんだぜ。例えばこれな」
「短銃。火薬の爆発で金属の玉を飛ばす武器。脅威度無しですね。どうぞお撃ちなさいな。単発ですし照準も不正確ですから、的が小さいようなら近付いてあげますよ。さあ、ほら」
「……死にやがれ」
バーン
「煙がいっぱい出ましたね。弾は私の身体を素通りしちゃいましたよ?」
「オヤジ、こんな奴相手に出来るかよ! 俺は逃げるぞ! うぎゃっ」
「逃がすわけ無いでしょうに。さあ次はあなたですよ」
「ち、畜生が!」
「手や剣も、私には当たりませんよ。ではさようなら」
「ぐがっ!」
「アルフレート様、暗殺組織の地下アジト、最後の二人も制圧完了しました」
「ご苦労様でした。しかし、少々遊び過ぎでは?」
「…妖精ごっこ、一度やってみたかったので」
「小型ドローンを、ルーデからリモート操縦しただけじゃないですか」
「ティナ様が、襲われたんだから復讐させてあげるって言ってくれたおかげで、結構楽しめました」
「そうですか。では、後の操縦はこちらで引き継ぎます」
「はい、元凶もとっちめてください」
「ティナは元々そのつもりですからね。再度になりますが、あなたに怪我が無くて良かった」
「警護ドローンとのデータリンクと直接操縦、かなり便利です」
「そうですね。デミ・ヒューマンの電子脳でも四機までならデータリンクして操縦出来ますから、警護対象と動きを即座に連動出来るのは、私と警護対象の意思統一の必要性が無くて、私が遠隔操縦するより対処が早い。今後もデミ・ヒューマンの警護はそうしましょう」
「ティナ様、なんでこんなことにまで気が付けるんですかね?」
「ドローンと共にスタンピードに対応した時、ドローンの動きとティナの意思が合わないことがあって、ドローンに合わせるのが面倒だったと言っていましたから。撃破目標がかぶったりすると、他目標への再照準動作が必要な分、無駄が多いのは確かです」
「ティナ様の方がドローンに合わせられちゃうところがすごいですよね」
「レベルアップは、人の思考速度も向上させているようなのです」
「私は電子脳だから、その恩恵にはあずかれないわけですか。残念です」
「電子脳の思考速度は、人の平均思考速度の三十二倍なんですよ。だからこそドローンを自在に操れるんです。単にティナの思考速度がおかしいだけで、普通の人はドローンの動きを見て撃破目標変えるなんて出来ませんからね」
「やっぱりティナ様って、すごい」
「前から分かっていたことです」
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