お見合いツアー ランダン側の意識改革 2/2
「何っ!? でかしたアウレール!」
「それがさぁ、僕全然頑張ってないんだよね。あまりにも素晴らしい物やきれいな景色、技巧を感じさせるものが多くてさ、ランダンにいる時なんかよりよっぽど素が出ちゃってるんだ。なのに、それがいいって言われちゃった」
「お前の素は、ある意味人たらしだからな」
「ひどい! たらし込んでなんか無いよ!」
「お前にそんな気が無いのは分かっているが…。俺はクラウ嬢とも気が合いそうだしな」
「クラリッサ嬢とも?」
「あ、しまったな。ここ数日素を出すことの楽しさに目覚めてしまってな、つい本音が出た。クラウ嬢の大切な友人であるティナ嬢は、俺なんかよりはるかに賢くて、そのくせ劣等感をまったく湧かせない。素直に話すと真摯に答えてくれる。最高の師でありながら民のために働こうとする同志だ。おそらくクラウ嬢も同じように感じているのではないだろうか。第三者的に見れば、人として完全に誑し込まれているな」
「システィーナ嬢はすごいよね。僕には人を殺すことも、死なせる命令も出来ない。なのに彼女は、そのことに全く後悔していないのに、自身を人殺しだと言う。いったいどんな精神をしてるんだろうね」
「ティナ嬢は正義という言葉を使うなと忠告してくれた。言い繕って人殺しという事実から逃げるなと言っているんだ。自身は人を殺した悪い人間、しかも誰かのためなどとごまかさず、自分の我儘で殺したと堂々と話している。その罪を正義などという言葉で第三者に責任転嫁などせず、自分だけで背負う罪だと認識しているのだ。覚悟が見事すぎて、無名の大英雄のように見えた」
「無名の大英雄ってどういうこと?」
「とんでもない功績を持ちながら、人を殺めた罪が大きいから、絶対に功績を褒められたくはない人かな」
「…人の犠牲の上に立った功績などろくなものではない、ただの自身の我儘だということでしょうか?」
「そういうことだ」
「…とんでもない覚悟ですね」
「神ならざる身で人を導こうとするなら、そういうやり方しか出来ないのだろうな。たとえどれほど人を幸せに出来ても、不幸な人を無くすことは出来ないからな」
「全部救いたいけど救えないから、自分の我儘で救いたい人を救ったと言っているんですね」
「だからこそ妖精王国から人への対応を任されたのだろうな。妖精は気まぐれだ。ティナ嬢も、自身が成すことを自身の我儘だと言っているから、妖精に近い考え方な気がする」
「おとぎ話の妖精って、子どもや旅人助けたりしますね。一方で、ひどいことや恐ろしいこともされる。ティナ様も、子どもや真面目な人を助けて悪人をひどい目に遭わせている。うわぁ、あの人半分妖精ですよ」
「半妖精か、言い得て妙だな。その半妖精から期待されたのだ。何としても我が国の意識を改革し、北部でまとまるぞ」
「「承知しました」」
「僕は?」
「アウレールは、ランダン王国のことを抜きにして、クラリッサ嬢をどう思っているのだ?」
「彼女いい子だよ。それこそ、妖精が助けたくなりそうなくらいの頑張り屋さん。僕も、あの子の隣にいて支えてあげたいって思うんだ」
「妖精王国から侯爵位を贈られるだけのことはあるな。アウレールがそう思うなら、傍で支えてやればいい」
「うん、そうする」
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