お見合いツアー 大陸視察 4/5

その後一行は、シャルト共和国内で転流工を行っている現場に着陸した。

この場所は川が蛇行を繰り返していて、雨が降るたび洪水が発生し、たびたび川の流れが変わるらしい。

昔から言い伝えられているために近くに町や村は無いが、後々のために整備しておいた方がいいだろうと、優先度が低く後回しにされていた場所だ。


大型ドローンによる大規模工事なので、大型機械妖精の実力を知ってもらうにはちょうどいいだろうと、着陸しての見学だ。


「ティナ嬢、ここは付近に町や村が無いようだが、なぜ工事しているのだ?」

「そうなんだけど、大雨のたびに流れが変わっちゃうような場所らしいから、大雨の後で下流への水量が変わっちゃうのも困るでしょ」

「…その程度のことで、ここまで大きな工事をするのか?」

「万一砂でせき止められたりして、一気に決壊したら下流で橋や人が流されるかもしれないでしょ」

「我が国でも、大山脈で大雨が降り、離れた晴れている場所の橋が流されてしまったことがございます」

「…下流で被害を出さぬために必要な工事ということか。ティナ嬢、川底や岸の部分が石のように見えるが、あれは何だ?」

「コンクリートって言って、消石灰や骨粉、砂と接着剤混ぜて固めたものだよ」

「…石を人工的に作っているのか?」

「石っぽい何かだけどね。自由な形で固められるから便利なんだよ」

「普通、石を自由な形で造ろうなどと考えるか?」

「ランダン王国でも、陶器とか作ってるでしょ? 同じ発想だよ」

「…規模が違い過ぎる」

「ティナ様、大型機械妖精って、いったいどれだけの物を持ち上げられるんですか?」

「アル、何tだっけ?」

「70tです」

「それって、どのくらいなんでしょう?」

「1m四角の入れ物にお水を一杯入れたのを七十個」

「何人人がいれば、そんなもの持ち上げられるんですか!?」

「ひとり100kg持ち上げるとして七百人」

「…とんでもないですね」

「そうでもないよ? 魔法使えばひとりでもできるから。ほら」

「……あの大きな水の玉、ティナ様が魔法で持ち上げているんですか?」

「そうだよ。ほら、ウサギさんに変身」

「ティナ、推定82tです。下流に影響が出ないよう、ゆっくり川に戻してくださいね」

「はーい」

「皆さんはマネしないでくださいね。たとえ魔法であっても、ティナにしか出来ませんから」

「やろうとも思わん。ティナ嬢、跳ねさせてないで早く川に戻してくれ。怖くてかなわん」

「あ、ごめんなさい。可愛くしたら怖くないかと思ったけど、ダメだったか」

「…滝つぼで水練していて溺れかけたことがある。叩き付けるような水で浮き上がれずに死にかけた。たとえ水でも、高さがあると恐ろしい力になる」

「そんなことあったんだ。私も滝から流れ落ちて死にかけたから、一緒だね」

「よく無事だったな」

「アルに助けてもらったからね。でもあちこちの骨が折れて大変だったよ」

「ティナ、水ってそんなに恐ろしいんですの?」

「普段は飲んだり洗濯に使ったりしてるから怖さは無いんだけど、多かったり流れが強かったりすると、人では対抗出来ないね」

「…実感出来ませんわ」

「桶に入れた水だけでも重いでしょ? その重さが高い場所から落ちてきたら、怖いよ」

「濡れるだけでは無いのですか?」

「高さにもよるけど、ぶん殴られたくらいの衝撃はあるよね」

「クラウ嬢、本当に恐ろしいぞ。滝など、複数人に連続で殴られているような衝撃だ」

「そだ、これ見て。えい!」


バキッ!


「あれ、顔くらいのサイズの水球を木にぶつけただけだよ。あのサイズの水球でも、高さで速度が増したら、細い木を折るほどの力があるってことなの」

「…認識を改めますわ」

「その方がいい」

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