お見合いツアー 黒死病 2/2

「じゃあ国内は様子見だね。さて、早く対策講じないと、バプール滅んじゃうかもしれないよね。どうしよう…」

「商人に利益を与えるような方策は採らないのでしょう? バプールの権力構造は商人ギルドが牛耳ってますから、強引な手で行かない限り商人ギルドを利することになります」

「あ~、また属国増やすの? 面倒なんだけど…」

「でも子どもたちは助けたいんでしょう?」

「分かってる。バプールの運営陣が拝金主義じゃなきゃ私が面倒背負い込むことも無かったのにって、ちょっとぼやきたがっただけ」

「少し大きめの領が一領増える程度です。ぐずってないで、さっさと占領プランください」

「はいはい。大店の店員が感染して倒れた映像ある?」

「六人分ならあります」

「各医師が診察した、それっぽい患者の数は?」

「現在も調査中ですが、感染確定が十六人。疑い例は五十二人です」

「感染確定の二十二人の映像付きで、人口密集地上空で黒死病の発生を公表。国王と商人ギルドが癒着して利権むさぼってるから、妖精王国が特効薬配布してもどこに流されるか信用出来ない。妖精王国は黒死病を発生させているのに手を打たないバプール王国に対し、属国バンハイムを守るために宣戦布告する。キャリー君で妖精運んで、王城と商人ギルトを制圧。各種不正の証拠を押さえて順次公表。ホーエンツォレルン城で派遣医療チーム組んで、安全が確保出来次第特効薬八百本持って現地入り。二百は国境の警備兵に廻して、残りは各領に配備。一次対応はこんなんでどう?」

「承知しました。すぐ手配します」

「うん、お願い。状況動いたら、いつでも知らせて」

「了解です。では、指示のため一時お傍を離れます」

「さて、みんなには嫌なこと聞かせてごめんね。さすがに黒死病は放置出来なかったから」

「当然だ。今の話からすると、我が国も助けられることになるな」

「そうなるね。黒死病の潜伏期間は七日以内だから、感染した商人がランダン王国を目指したとしても、途中のバンハイム内で発症しちゃう。その時点で感染者と接触者に特効薬投与するから、ランダン王国へ持ち込まれることはまず無いと思う」

「感謝する」

「いえいえ。単にバンハイム国内で感染を広げない策だから」

「星の影響病が西部同盟内で流行った時のことを思い出しますわね」

「あの時も、おバカ領主が特効薬ガメて売っちゃって、感染広がったからね」

「疫病に対して自身の利益を優先する者など、領主ではございませんわ」

「だから領民たちに殺されちゃったんだよ。アホだよねぇ…」

「…聞いてもいいか? ティナ嬢は、どんな疫病に対しても特効薬を作れるのか?」

「私がじゃなくて妖精王国がだけどね。それと、今知られてる疫病に対してはだよ。さすがに知らない病気に対しては、特効薬作れるかどうか分かんないから」

「…充分すぎるだろう」

「そんなこと無いよ。死んだ人を生き返らせるのは無理なんだから」

「それが出来たらもう神だぞ」

「神様なんて私には無理だけど、子どもを亡くした親や、恋人、連れ合いを亡くした人にはあげたくならない?」

「…心情は分かるが、人の身で神の領域に手を出すのは危険だぞ」

「分かってるよ。だけど人の身だからこそ、それを欲しちゃうんだよね」

「寿命ある人の身だからこそか? 真理だな。だがそれでも止めておけ。宗教団体から異端扱いされるぞ」

「それはとっくの昔になってるかな。バンハイム王国にあったカリアゼス教中央教会からは、神敵扱いされてたから」

「…過去形かよ」

「うん、過去形になっちゃったね。でも忠告ありがとう。神様が寿命ある者として人を作ったのなら、そうしなければいけない理由があったはず。だからその領域を冒す気は無いよ」

「…無駄な忠告だったな」

「そうでもないよ。大切な人を失って狂いそうになっても、真摯に忠告してもらった分、踏みとどまれるから」

「それならいい」

「さて、厄介な急報で時間取られたけど、見学再会しようか」

「おい、黒死病への対応はもういいのか?」

「今やれることはやっちゃったから、しばらくは状況変待ち。じゃあこっちは、予定再開しよう」

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