お見合いツアー 黒死病 1/2
昼食時、アウレール殿下が庭のすばらしさを語り、料理の美しさや旨さを褒め称えた。
ランダン王国組は皆そう思っていたので、口々に同意しつつ気に入った風景や建物、装飾、料理などを語って盛り上がったため、アウレール殿下はすごく楽しそうだった。
王城に勤める者たちと仕事抜きで気兼ねなく好きな物の話ができる機会は、そう無いのかもしれない。
食休み後は皆で娯楽室に移動し、様々なゲームを楽しんだ。
ランダン王国組にはボーリングが大人気で、ユーリアとカーヤも混ざってのボーリング大会になっていた。
優勝者はカーヤ。
レベルが上がっていて運動神経も良いため、ストライクやスペアを連発していた。
ボーリング大会で盛り上がる横では、ティナ・ハルトムートペアとクラウ・アウレールペアのナインボールペアマッチが行われ、クラウ・アウレールペアが勝利した。
ティナは魔法で空中に浮きながらの参戦だが、空中に浮いているため、ショット時の反動を抑えきれず、どうしてもブレが出てしまうのだ。
アルの慣性キャンセルシステムを、魔法で再現するのは難しいらしい。
最初の内はお仕事モードだったランダン王国組も、一緒に楽しく遊んでしまっては、もう友達感覚だ。
さすがに王子様やティナ、クラウには敬意を払うものの、敬意を払われる側が素の話し方をするため、ポロポロと本音が零れる。
失言となっても笑って許されてしまうため、緊張感が保てない。
このあたりから、クラウとアウレールをくっつけようと楽しむ、デート見守り集団と化していた。
その日は皆が露天風呂を使い、男湯女湯ともに、恋バナトークで盛り上がった。
システィーナ御所で一泊した一行は、翌朝バンハイムの新首都に移動。
一日目は各種設備や議事堂、ダムなどを見学し、シャンボール城に似せた中央棟の展望室で昼食。
もう視察の雰囲気ではなく、友達同士の首都観光のようなノリだった。
ただ、ティナが楽しかったのはここまで。
食後のお茶の最中に、アルフレートが寄って来て耳打ちした。
「ティナ、西の小国で腺ペスト発生です」
「うえ、またかぁ…」
さすがに王子とその従者たち、ティナの溢した言葉に一気に遊び気分が抜け、聞き耳を立てる。
「ティナ嬢、都合の悪い話なら席を外すぞ」
「う~ん…。ランダン王国も無関係とはいかないかもしれないから話すよ。西の小国バプール王国で、黒死病の発生が確認されたの」
「黒死病!?」
「今ランダン王国って、バプールと取引してる?」
「国としては取引していないが、民間までは調べねば分からんな」
「もしあったら、道中のバンハイムにも蒔かれそうだなぁ…。アル、特効薬は日産何本?」
「千四百本です」
「わお、随分製造ライン増設したんだね」
「バンハイムとシャルト共和国を合わせると、人口百万人ほどになりますから、これでも足りないと思っています」
「まあそうか。で、バプールの感染状況は分かる?」
「今はまだ初期段階のようですが、大店の食料品店の従業員たちが軒並み感染していますから、爆発的に広がる可能性が高いですね」
「すでに町中に病原菌は散っちゃってるか。国王ってどんなタイプだっけ?」
「商人ギルドの後見を受けて戴冠した人物で、ほぼ商人ギルドの傀儡ですね。ちなみに金儲けに忙しいようで、未だ黒死病の発生に気付いてませんよ」
「マジか。そんな国王に特効薬渡したら、絶対商売にされるな。民間医療チームの派遣で行くか」
「そちらも難しいかもしれません。商人ギルド傘下の者が多いので、感染が広がってからでないと治療を拒否される可能性もあるかと」
「症状が無きゃ、商人ギルド未承認の薬なんて飲まないか。かといって商人ギルドに薬を持ち込めば、商品にされるの目に見えてるし」
「ティナ嬢、国内の感染予防が先ではないか?」
「そっちはもう出来てるよね?」
「はい、バプールとの国境で、妖精による検疫を手配、警備兵にも通達済みです。不法越境対策で、国境線も妖精による巡回警備中。バンハイム国内で感染が確認された場合、接触者全員に特効薬を飲ませるつもりです」
「だよね。各代官への通達も済んでる?」
「監察官に、バプールでの黒死病発生を公表し、バプール商人を探して検疫を実施するよう依頼しました」
「じゃあ国内は様子見だね。さて、早く対策講じないと、バプール滅んじゃうかもしれないよね。どうしよう…」
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