お見合いツアー 後は若いお二人で

領主館屋上に着陸したクール君からティナに先導されて降りたお見合いメンバー一行は、またも身体が宙に浮く体験をしながら外に降り立ち、シュタインベルクの面々に出迎えられてしどろもどろに挨拶。

ティナは雪と寒さ除けに温風を噴水のように吹き上げた結界的なものを張ってはいたが、小雪が舞う館の屋上で長々挨拶するわけにもいかず、すぐに館内に移動。


大食堂に通され、ここで従者の紹介も兼ねて正式にご挨拶。

ランダン王国側は、王太子と従者二人、第四王子と従者一人、護衛四人の計九人。

シュタインベルク側は、ティナとクラウ、アルノルト、ユーリア、カーヤ、ディルク(騎士団長)の六人。


お茶を飲みつつ各自挨拶を交わしたら、早速領都見学ツアー。

藤原式揚水水車、砂糖工場、綿織機施設、妖精教会、マンション型第二城壁。

領都シュタインベルクで特筆すべきはこの程度なのだが、ランダン王国の面々にとっては、見るのも聞くのも初めての事ばかりだった。


ハルトムートが説明役のクラウに根掘り葉掘り質問するのだが、クラウはすらすらと答えていく。

つまりクラウはお飾りの領主などではなく、自領の設備や産業を熟知していることになる。


自国の技術を凌駕する施設の数々を、十二歳の少女が理解していると知ったランダン王国の面々は、驚きを隠せなかった。

しかもそのすべてを考えたのは、見た目五歳の幼女だという。

十一歳だと主張しているが、その知能には恐ろしささえ感じてしまう。

容姿や所作が可愛らしいので和みそうになるが、天使と評したハルトムートとその側近は、荒唐無稽なはずの自身の説が正しいとしか思えなかった。


見学途中、ランダン王国第四王子であるアウレールが興味を示したのは、雪景色の領都の風景、妖精教会、途中第二城壁内のレストランで摂った昼食、そして意外なことに、紳士婦人服店。

どうやら、きれいな景色、風景に溶け込んだ建物、きれいな盛り付けの食べ物とその味、服のデザインのすばらしさ。こういった物に興味を惹かれるらしい。

食事以外ハルトムートが興味を示したものと被らないことに、性格の違いを感じたクラウだった。



領都シュタインベルク見学ツアーを終えた一行は、アルノルトとディルクを残してホーエンツォレルン領に移動。

湖に囲まれたハルシュタットの街並みを見たアウレールが、感動して窓にへばり付いた。


サービスにとハルシュタットの街並みを周遊しつつ、ティナは領内の施設を解説。

解説が終わってもアウレールの目のキラキラが収まらなかったが、城の中も一級の美術品みたいになっているとクラウに言われ、さらに目を輝かせて城行きをせがみだした。


クラウはその様子を見て笑っていたので、相性はさほど悪くないようだ。


城に入ったティナは一行を二手に分け、クラウとアウレールを城内デートに送り出した。

双方自分の従者をひとり付け、ティナはメイド姿のデミ・ヒューマンを案内役にさせた。


ハルトムートとアウレールが興味を示す物は違うだろうし、ちゃんとお見合いっぽくなるからとティナがハルトムートを説得したのだ。

若い二人でデートさせようというティナは、容姿に似合わないおばちゃんみたいな話し方だった。



城内を一通り案内して城の展望塔に上がった一行は、夕焼けの景色を楽しみながらデートに出た二人を待った。


かなり遅れて陽が沈みかけたころに到着した二人は、距離が近くなっていた。

ティナはデートののぞき見などしていないが、案内に付けたデミ・ヒューマンから時々入る通信は聞いていた。


二人は美術館のような城内を廻りつつ、感想を話し合ったり好きな物を教えたりと、なかなかいい雰囲気だったそうだ。


その後食堂でとんでもなく豪華な晩餐を摂り、ランダン王国一行は割り当てられた客室に案内された。


客室担当のメイド(デミ・ヒューマン)に設備の説明を受け、部屋の風呂でゆったりと入浴。

怒涛の体験ばかりの一日だったために、入浴後に少し横になってベッドで休憩したはずが、気付かぬ内に眠ってしまっていた。


一方クラウたちは大浴場を使って三人で話し合っていたが、シュタインベルク家としての話し合いだろうと、ティナはお邪魔しなかった。

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