使者さん、倒れたって
「ティナ、クラウから通信が入っています」
「おや、何だろう? 繋いで」
「了解」
「ティナ、少々困ったことが発生してしまいましたの。先日のティナの言葉に甘えて、相談させてくださいまし」
「いいよ、どうしたの?」
「先日の婚約の件なのですが、ランダン王国の使者が、寝込んでしまいましたの」
「へ? …さすがに1,000km移動はきつかったのかな?」
「どうもそのようですわ。医師の診断では、極度の疲れと栄養失調だそうです。ポーションを飲ませて落ち着いたのですが、体重が戻るまで、しばらくは静養させた方が良いとのことですの」
「あー、シュタインベルクにたどり着いて使者の任を半分終えたことで、気が緩んじゃったのかな」
「従者にお聞きしましたが、結構無理な旅程だったようで、シュタインベルクの寒さが堪えたのかもしれません。その従者自身も、かなり痩せたのだそうですわ」
「王族の婚姻打診の使者だもんね。冬場なのに無理しすぎたのか」
「それで、使者の方が回復するまで待っておりますと、春になりそうですの。王族からの申し入れですからお返事が遅れるのは失礼になりますのでこちらから使者を出したいのですが、当家には爵位持ちの家人が騎士爵しかおりません。他国の王族への使者が騎士爵ではかなり格不足ですので、妖精王国から一時的にでも爵位をお借り出来ませんかしら?」
「あ、ごめん。その辺のこと話してなかったね。妖精王国は、本爵位持ちならふたつ下の法服爵位までは任命可能にする気なの。だからクラウは、法服子爵までは任命可能ね。もっとも法服爵位乱発されても困るから、二つ下は二人、三つ下は四人、四つ下は八人までに制限する気なの。忙しいさ中に決めたから、伝え忘れてたよ」
「それでは、わたくしが法服子爵以下を任命してよろしいの?」
「いいけど、爵位に応じた給金は規定があるから、その通りあげてね」
「それは当然ですわ。でしたら何とかなりそうですわね」
「でもさ、他国の王家への使者だから、それなりの人数は要るよね。長期に抜けられるのも困るし道のりも大変だから、映像会談を申し込んでみようか?」
「失礼には当たらないかしら?」
「申し込むのは私だし、向こうの王太子なら面識もあるから、とりあえず聞いてみるよ。この縁談考えたのは王太子だから、王太子宛でいいよね?」
「いいのかしら?」
「妖精王国は映像会談が基本だよ。王太子とも映像会談したことあるから、ダメ元で聞いてみるね」
「そういうことでしたらお願いしたいですけど、少しだけ待って。着替えさせてくださいまし」
「アル、ハルトムート王太子って、今正装?」
「いいえ。面会予定無しで城内にいる時の服装ですね。現在執務室で執務中です」
「そういうことらしいから、クラウだけ正装だと、却って失礼にならない?」
「…そうなるかもしれませんね。では、確認をお願いしますわ」
「分かった。アル、ハルトムート王太子に繋いでくれる?」
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