各地の状況
「ティナ、細々と報告がありますが、いいですか?」
「はいはい、どうぞ」
「まず、シャルト共和国内の報告です。カユタヤとの国境付近に建造中の大型充電塔ですが、周りに見物客が現れ始めました」
「え? 地下水脈の関係で、街道から結構離れた場所の荒れ地だったよね?」
「はい。ただ建設中の塔が大きいので、街道からも見えたようです。最初は街道で立ち止まって見ている程度でしたが、国境門警備の兵たちに聞いて妖精の塔だと分かったようです。そのため巡礼者が近くで見ようと、集まって来ました」
「しまった。警備兵がびっくりしないよう事前通達しといたけど、口止めはしてなかった。そりゃ気になったら近くの兵に聞くよなぁ…。気付けよ私」
「別に建設中からバレてもいいのでは? 作業中のドローンに向かって拝んでいる者や、カユタヤで妖精の飲み薬をもらって助けられたと、派遣医療チームの活躍を喧伝している者もいますね」
「完成してからお披露目しようと思ったのに、建設風景すら崇拝の対象になるとは…。でも、充電塔って妖精の塔って呼ばれてるんだね」
「もうその名称で定着しつつありますね。この拠点は大きいですし、ティナが聖地っぽく見えるようにデザインしましたから、観光地になりそうですね」
「バベルの塔サイズは大きすぎたか。でもローバーやクール君も充電したかったから、中の空洞が広く欲しかったんだよなぁ…」
「外観は登れるようなデザインではありませんから、中身スカスカでも中を見られたりはしません。ですが高さがかなりあるので、ドーナツ形に多層化する予定です」
「待機場所そんなにあっても、地下水力発電だけじゃ充電しきれないでしょ?」
「一層をすべてバッテリーにして、魔素発電機も設置します」
「あ、そうなんだ。中身はアルにお任せだから、好きにして」
「はい。次はティナが予想していた住民の悪感情ですが、やはり各所で発生はしたものの、すでに鎮火傾向です」
「お。うれしい傾向だけど、何でだろ?」
「お年寄りと、インフルエンザ罹患から回復した者たちが活躍しています」
「回復者は妖精王国にありがたみ感じてるだろうけど、お年寄りはどういうこと?」
「過去に自然災害で被災した経験があって、ドローンによる改修工事のありがたさを、悪感情でぼやいた者に説いてます。被災者の悲惨な実話は、かなりリアリティーがありますからね。また、過去にスタンピードが発生した領でも、同様に被災者が当時の様子を話して聞かせています」
「……よかった。意義を理解してくれてる人、結構いたんだ」
「はい、良かったですね」
「うん♪」
「次は国外です。国外追放にした似非表敬訪問団、国元にたどり着いたので暴露放送を行いました。結果、幼女に負けた愚か者として非難され、引き籠っていますね」
「やーい」
「他の王族たちも周囲に反発されることが多くなり、自分たちがさほど強くないとあの映像で理解したようで、偉ぶれなくなっていますね」
「あ、やっぱりみんな低レベルだったんだね」
「しょぼい魔法しか使えませんでしたからね。レベルアップの理由も分かりましたよ。魔獣狩人の一族に、極秘でレベルアップを依頼していました。狩人が魔獣の魔核を破壊出来るまでめった刺しにすることで原理を悟らせずにレベルアップさせていましたが、かなりのボッタクリ価格でしたね」
「なるほど、それで低レベルだったわけか。狩人の方は高レベルだった?」
「いいえ。デミ・ヒューマンたちより低いレベルですね。なにせ一回で高額の依頼料が手に入るので、無理に魔獣を倒す必要がありませんからね」
「そういうことか。じゃあ何かしらの手を打つ必要は無いね。他には?」
「海向こうのアホ王国、滅びました」
「早いな!」
「王城爆破とドローンによる×マーク攻撃で、国の重鎮が王都から逃げ出していました。ドローンの機数が少なかった当初は王都内しか×マーク攻撃出来ませんでしたから、そのため王都外なら大丈夫だと思ってあちらこちらに疎開していたようです」
「あはは、そんなんじゃ統合的な対応なんて執れるわけないね。連合国側は略奪や国民の奴隷化しなかった?」
「当初はやりましたので、しみしみ液をお見舞いしました。何度かしみしみ液を喰らううちにこちらの意図に気付いたようで、各軍に略奪や奴隷化を禁止する通達が出ました」
「ならいいや。それにしても滅ぶの早かったね」
「深達度Ⅲが利きましたね。戦闘中に奴隷を前面に押し出そうとして、指揮官クラスが指揮を執れなくなりましたから」
「ああ、そういうことね。指揮する者がいなかったら、軍なんて烏合の衆だ。突撃されたら逃げ散るだろうね」
「ええ。実際そのような場面が何度もありました。あまりにも呆気ないので、連合軍側の指揮官が罠を警戒するほどでしたよ」
「そこまでか。…まあ、そんな戦闘なら、双方の死者数も少なく済んだでしょうね」
「逃げ散った者たちも、追い詰められたらすぐに降伏しましたからね」
「そりゃ指揮官いなきゃそうなるか。よし、海向こうは監視程度にドローン残して、あとは引き上げちゃって」
「了解。報告は以上です」
「うん、ありがとう」
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