結婚観
「ティナ、クラウからティナに通信依頼が入ってます」
「はいはーい、繋いで」
「ティナ、お忙しい時に申し訳ないのですが、少々相談に乗っていただきたいことがあるのですが…」
「うん、いいよ。なになに?」
「通信では少しい話しづらいことなのです」
「おや。じゃあ私がそっちに行こうか?」
「…ご無理を言いますが、出来ればそちらにお伺い出来ないでしょうか?」
「全然大丈夫だよ。クール君を迎えに出すけど、いつがいいの?」
「ティナの都合が良ければですが、五日後でいかがでしょう?」
「アル、五日後って何か予定入ってた?」
「基本こちらで政務の予定なので、お休みにしても問題無いかと」
「分かった。クラウ、いいみたいだよ」
「では申し訳ないのですが、よろしくお願いします」
「じゃあ五日後の朝に迎えを出すね」
「はい、では五日後に」
「はーい」
「…クラウ、なんだかちょっと深刻そうだったね?」
「そうですね、いつもとは少し様子が違いました」
「ひょっとして第四王子の件かな?」
「ああ。使者は三日前に、シュタインベルクの領主館に到着していますね」
「私に相談ってことは、妖精王国関係で悩んでるのかな?」
「クラウの立場は、世間的には妖精王国に二番目に近しい人物ですからね」
「クラウ自身の結婚で、妖精王国との関係がどう変化するか知りたいのかも」
「結婚相手次第で妖精王国との関係は変化するでしょうし、ティナとクラウとの個人的な関係も変わる可能性がありますね」
「私個人としてはずっと友達でいたいんだけど、結婚しちゃうと新たな義理とか出来ちゃうもんね。それに、旦那様大好きで旦那を最優先されると、ちょっとへこむかも」
「クラウはそういうタイプでは無いでしょう。実際婚姻の話はシュタインベルク家だけで判断してもいいのに、わざわざティナに相談してくることこそ、ティナを優先していると思います」
「シュタインベルクは公的には妖精王国所属の自治領だから、妖精王の承認が欲しいのかもね」
「それ、ティナもクラウも、実際は違うと知ってるじゃないですか。どうせティナの事ですから、たとえクラウが夫を優先して妖精王国と距離を置いたとしても、困っていたら友人として助けますよね?」
「当然よ。クラウは私にとって、一番大事な友達なんだから」
「でしたらクラウ個人が判断しても、問題ありませんよね?」
「そうなんだけど、やっぱり旦那を優先されるとへこむのよ」
「ですが、クラウは伴侶より他者を優先するような女性とは思っていないのでしょう?」
「分かってるよ! クラウは結婚したら旦那様を蔑ろにするような子じゃないわ。だけどクラウを取られちゃうみたいで、なんか悔しいの!」
「確かに遊べる回数は減りそうですね。ティナも結婚して、夫婦同士で遊んでは?」
「このちみっこボディで結婚なんて出来ないし!」
「レベル上げ過ぎたのはティナじゃないですか。もうレベル上げは止めましょうよ」
「嫌! 私はアルともずっと一緒に居たいの!!」
「くっ! 突然なんてことを言うんですか!? 我儘だと叱りたいのに、叱れないじゃないですか!」
「……正直に話すね。私は多分結婚しない。だから出来る限り寿命延ばして、アルと一緒にいたいの。たとえ仲良くなった人たちを見送り続けてでも」
「……システムが過負荷状態です。しばらく休ませてください」
「え? 故障!? 嘘? 大丈夫!? 私に何か出来る? 置いてっちゃやだよ!?」
「混乱しないでください。ただの一時的過負荷です。少し休めば冷却出来ますから」
「……ちゃんと休んで」
「はい、少し休めば元に戻りますから、心配しないでください」
「……うん」
「ティナも少し休憩しましょう。イレーネ、私とティナは少し休憩しますから、ティナにお茶をお願いします」
「承知いたしました」
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