表敬訪問? 怪しいな

「ティナ、シャルト共和国に、魔導王国セルビという国から表敬使節団がやって来ます」

「その大層な国名の国、たしか山脈南側の国だったよね?」

「シャルト共和国から国をふたつ挟んだ東の国ですね。前回の奴隷狩りが上陸したルーマナ王国の西隣になります」

「どんな国か分かる?」

「ドローンを派遣してからまだ間が無いので情報が少ないのですが、市井では王族が魔導に長けた一族といううわさが多いですね。実際に王族のレベルが上がっているようですし、小さな魔法を使っているのも確認しています。しかも王族たちは、かなり選民意識の高い発言をしていますね」

「そんな国が国をふたつも挟んでまで、わざわざシャルト共和国に、しかも表敬訪問? 絶対他の目的あるじゃん」

「そうでしょうね。首都ルーデへの到着は、おそらく明日の夕方です」

「は? 建前だとしても表敬訪問って言ってるのに、先ぶれが前日なの?」

「先ぶれはありません。国境を守っていた兵士が突然の来訪に驚き、早馬を出して首都に知らせてきました。隣国王室の紹介状も持っていたため国境に留め置くわけにもいかず、通すと同時に早馬を出したようです」

「あー、東側国境のドローン、ほとんど通行が無いからってカユタヤに派遣した医療チームのサポートに廻したのは失敗だったか」

「アホ王国に追加派遣してさらにカユタヤにも派遣しましたから、ドローン不足でしたので仕方ありませんよ。衛星画像の監視だけでは、商隊の馬車と区別が付きませんからね」

「それでも国境のは残すべきだった」

「若干の商人が荷を運ぶ程度の国交でしたから、私も重要視していませんでした」

「東隣は小国だからと、国境での情報収集を軽視したのは反省材料だね。で、先ぶれさえ出さない似非表敬訪問団の目的は何だと思う?」

「普通に考えれば、新たな大国の動向調査でしょうね」

「それなら国家運営陣の心象良くしとかないと、軽くあしらわれて国家の運営方針とかの突っ込んだこと聞けないよ。だから先ぶれ出してないのが気になる」

「団の代表がアホなだけとか?」

「動向調査にアホの子出してどうすんのよ? ……いや待って。王族がレベル上げてふんぞり返ってるような国ならありえるのか?  団長が傍系王族とか…」

「早馬が口頭伝達だったためか、団長の素性までは情報がありませんね。ですが国元の王族は、魔素カメラで撮影した限り低レベルで、魔素制御も全く出来ていません」

「あれ? てっきりレベルアップの仕組み知っててもっと上げてるから選民意識が高いんだと思ったんだけど、何でレベル低いままなんだろう?」

「魔素カメラからの映像データから予想すると、数回レベルが上がった程度と思われます。選民意識も、一般人よりは魔法がまし程度なのに、自身を魔導王一族とか表して他者を見下しています」

「どんどん嫌なタイプに思えて来たな。…まさか、自分たちは魔法の天才一族だから敬われて当然。属国という立場に甘んじるような国は、我らに従がって当然とか思って無いよね?」

「相手がアホすぎて、ティナが行動を読めないタイプかもしれませんね」

「私にとって、ドの付く阿呆の思考を読むのは難しすぎるんだよ」

「なんだか今回もそんな気がしてきました」

「…首都のアンネリースに連絡入れといて。表敬訪問団との面談の際は、私も同席するって」

「同席時の肩書はどうします?」

「…宗主国の外務卿あたりが、同席するには適当かな」

「了解、そのように通達します」

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