カユタヤでインフル
「ティナ、カユタヤでインフルエンザの発生が確認されました」
「ああ、山脈南部でも、やっぱあるよねぇ…。すでに流行は始まってるの?」
「はい。カユタヤは隣国として国家運営陣の情報収集をしていただけですので、上層部に報告が上がって来てから気付きました。医療機関を重点的に情報収集したところ、すでに大規模な流行と思われます」
「もう特効薬作り始めてるよね?」
「はい。二国が属国に加わったのでピコマシン製造ラインを強化しましたが、それでも日産五百本が限界です」
「製造ライン十倍にしても足りないか…。もうシャルト共和国のデミちゃんたちには連絡入れた?」
「はい、感染予防対策を徹底するよう連絡済みです」
「デミちゃんたちは感染率低いんだったよね?」
「体内に一定量のピコマシンを持っていますからね。ただし病原体に特化した物ではありませんから、一度に大量のウイルス侵入を許すと、発症はします。ですが意図的にウイルスを大量摂取し続けない限り、重症化はありません」
「じゃあとりあえずは安心か。でも困ったな。シュタインベルクの時と違って人の出入りの桁が違うから、隔離対応は無理だね」
「スタンピード終了後に配った魔獣からはぎ取った素材を、未だに多くの商人が買い取りに訪れていますからね」
「う~ん…。カユタヤでの流行り具合からすると、すでにウイルスは持ち込まれてると見た方がいいね。よし、こっちで派遣医療チーム作って特効薬を持たせ、シャルト共和国の全医療機関を巡回させよう。でも移動の足が弱いな。クール君一機は出来上がった特効薬の輸送に使いたいから、二号機だけでシャルト共和国全体をカバーするのはきついな」
「ティナ、この時代は往診が一般的です。その方法では、たとえ移動手段が確保出来ても、医師や患者は医療機関にいませんよ」
「ああ、そうだった! ……じゃあ各領にあるドローンを見える形で領内巡回させて、該当症状の出た場合は呼び止めてもらおう。各領の兵士に映像で指示して患者を一か所に集めてもらって、そこにクール君で医療チームが急行しよう」
「それでも患者が各地で多発した場合、クール君一機では対応しきれませんよ。速さはクール君に劣りますが、バンハイムに配備した監査官用の高速ローバーを回しましょう」
「それは患者数が増えだしてからでいいよ。監査官の足が無くなるとドローンに乗っての移動になるから、バンハイム地方での緊急時対応能力が落ちちゃうもん」
「了解です」
「あと、国境の検問所にもドローン多めに配備して。サーモグラフで発熱者の確認したいから」
「了解。発熱者は一時隔離でウイルス検査ですね?」
「うん、そうして。それと、デミちゃんズは特効薬飲んでも問題ない?」
「五分の一の服用量で、感染確率は1%未満になりますね。それ以上は体内のピコマシン数が多くなりすぎて、制御しきれない可能性があります」
「じゃあ五分の一服用してもらおう」
「了解ですが、医療チームへの参加希望者が多すぎますね。九十二名が参加を希望しました」
「おおう…。二人一組でローテーションにしよう」
「参加希望者に通達しました。他には何かありますか?」
「あ、シャルト共和国内の医師に通達出して。今回のインフルエンザの詳しい症状知らせて、こっちで患者を取っちゃう形になるから、兵と協力して初期治療や看護してくれたら協力金支払うって。それと、生産出来次第医師や医療関係者用へ特効薬を配布することも知らせて」
「そうですね、手配します」
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