ケケケ
五百人の移住をなんとか終えたティナは、ホーエンツォレルン城に帰って来た。
だが、まだ今回の事件処理が終わったわけでは無い。
「ティナ、六隻の大型帆船、どうしますか?」
「それなんだよねぇ。売るにしても他国からの鹵獲品だから売った先が難癖付けられたらやだし、かといってどこかに出元明かしてあげちゃうと、海軍力の軍事バランス崩れる数だしね。バンハイムの北部で使いたいところだけど、あそこは岩礁多い上に冬になると流氷流れて来るし。かといってシャルト共和国には海が無い。シュタインベルクの西には海があるけど、深い森突っ切らないといけないから道作るの大変だし。どうしたもんかねぇ…」
「ひとつ提案があります。シャルト共和国の南西部、このあたりに港に適した場所があります」
「そこ、魔の森突っ切ってるじゃん」
「それがここの森、この範囲には龍脈がありません」
「ん? 魔獣住んでないの?」
「いえ、魔獣はいますが、龍脈のある魔の森から流れて来ているだけですね」
「中規模の領くらいの広さがあるね。それだけの広さを伐採すれば魔獣も心配無さそうだけど、シュタインベルクと同じで伐採大変そう」
「シャルト共和国内も危険個所の改修工事が終わりそうですから、大型ドローンを伐採に廻せますよ」
「バンハイムより、だいぶ早く終わったね」
「旧帝国は国土が広いので、危険個所を避けて町が作られたのでしょう。川の浚渫や護岸工事がほとんどでしたから」
「なるほどね。港の候補地は?」
「浚渫不要で、湾になっている場所は三か所です。上空からの映像はこちらです」
「お、なんかドゥブロブニクみたいな場所がある。その出っ張った部分に港町が作れそう」
「周囲は岩石だらけですから、整地するだけで建材が手に入ります。問題は、住民ですね」
「そうだねぇ……」
「何か考えましたね?」
「いや、奴隷狩りに来たあの胸糞悪い国から、奴隷を移住させてやろうかと。そうすればあの国は奴隷いなくなって、自分たちできつい仕事しなきゃいけなくなるでしょ?」
「サルデール王国ですね。王都では王城崩壊から一夜明けて、大騒ぎになってますね」
「名前も憶えたくないから、胸糞王国で」
「ティナが使う言葉には不適切です」
「じゃあアホ王国」
「それなら許容します」
「そのアホ王国、王都で奴隷虐待してる奴見つけたら、深達度Ⅰの×マーク喰らわせて。酷かったらⅡで」
「了解です。出来上がった小型ドローンを、追加で廻してもいいですか?」
「うん。奴隷を使うのが怖くなるまでやっちゃって」
「そうなると秘密充電拠点も整備した方がいいですね。中型と大型も送りましょう」
「そのあたりはお任せで」
「了解」
「それで、アホ王都の様子はどんな感じ?」
「まだ一日も経っていませんから、王を批判する声は拾えませんね。火の玉が落ちたとか、王城が大きな炎に包まれて爆発したとか、見たままを話し合っています」
「王城の方は?」
「警告を信じてはいなかったようですが、わが身可愛さに王や貴族たちは王城から離れていました。つられて使用人たちも離れたようで、人的被害は飛散した瓦礫で怪我をした程度です。奴隷たちは持ち場を離れられなかったようですが、上層部を派手に横方向に爆散させたので下層部は崩れず、直下にいた奴隷たちより城を遠巻きにして見ていた貴族たちが破片で怪我を負っています」
「さすがアル。理想的な爆破だね」
「ミサイルは爆風方向を制御できる仕様ですからね」
「ミサイル自体が爆散するのに、爆散方向を制御出来ちゃうんだ」
「薬室が炸薬の種類と充填場所を変えられるので、爆散方向を調整出来る仕組みです」
「出たよアルの謎技術。それで、トップのアホどもの動向は?」
「それもまだです。城に住んでいた王侯貴族は、新たな生活の場と生活環境づくりに奔走しています。王都に屋敷を構えていた者も、焼け出された者たちの受け入れに時間を取られています」
「ケケケ、ざまみろ」
「その笑い方、似合ってませんよ」
「むう……」
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