アルの驚き
ティナが眠ったのを確認したアルは、アルフレートを休ませてから収集した情報の詳細な解析を始めた。
(今日は驚くことが多かったですね。元々ティナには驚くほどの思考力が備わってはいましたが、まさかティナが艦隊の指揮官並みの人格を発揮出来るとは思いもよりませんでした)
(戦闘初期から相手の頚髄だけを狙い、医療ポットで記憶をスキャンするために脳は破壊しない周到さ。しかも一切感情をブレさせることがありませんでした)
(さらに驚くのは、最初に火器の火口付近に光の矢を着弾させ、相手の攻撃力を落とした上に、暴発で相手側を混乱させていました)
(しかも、痩せてみすぼらしい服を着た人物には、一切攻撃しませんでした。奴隷と仮定して残したのでしょうが、乱戦に近い状態で勝手に動き回る奴隷を認識して攻撃しないなんて、いったいどんな認識力を持っているのでしょう)
(奴隷と思われる者だけを残しても相手と一定距離を保っていたのですから、戦闘は終了していないと警戒していたはずですが、笑顔で優しく声を掛けていました。臨戦態勢でありながらそのような行動が執れるなんて、思考を分割出来てしまうのでしょうか)
(戦闘終了後の差配も見事でした。戦闘の後なら軽い興奮状態にあるはずなのに、脳波やホルモン分泌は平常時のまま。にこやかに奴隷たちに状況を説明していました)
(クール君一号機を残したまま二号機とキャリー君の入れ替えを指示したのは、万一の伏兵や突発事態に備えての、電力の確保でしょう。それが証拠に、キャリー君到着を待ってから一号機を敵国に向けて発進させています)
(その後の指示も冷静で的確でしたが、報復措置の指揮には驚かされました。一号機にドローンを積んでいましたから敵国で首謀者を暗殺する程度と予想していましたが、まさかティナ自身から、ミサイルの発射を命じられるとは思いませんでした)
(退避時間を与えてはいましたが、再度の退去勧告はせずにいきなりテンカウントの秒読みでした)
(ミサイルの破壊力が城の上部を吹き飛ばす程度と指定されていましたから、奴隷たちは城の下層に多くいると踏んでいたのでしょうが、奴隷たちの被害がゼロとはいかないと分かっていたはず。それでも破壊を強行したのは、上層部に対する見せしめと、住民に対しての示威行為でしょう)
(普段のティナなら絶対にしないような命令でしたから、実はかなり怒っていたのかもしれませんね。その後の脅しも住民に向けたもののようで、奴隷制度の上に成り立つ住民の生活にも怒りを覚えていたのでしょう)
(しかもこちらに再度の侵攻が無くとも、奴隷を人として遇さねば罰を与える内容。そのために魔素発電機と多くのドローンを積んで行ったわけですか。見せしめに、反抗する者たちにも罰を与える気ですね)
(そして指揮終了後のため息。ため息ひとつで、普段のティナの脳波パターンが戻ってきました。ため息ひとつで人格を切り替えられるなんて、器用にも程があります)
(今回は上陸した兵百人近くをティナが魔法で殺害していますが、メンタルケアの必要が無さそうなところが、上陸した兵を人として見ていない証拠なのでしょう)
(普段はあれほど温和で善良な性格なのに、理不尽を働く者を人として見ない苛烈さ。しかも怒り狂うのではなく、最大効率を求めるかのように自身の人格さえ入れ替えられる。私の所有者は、とんでもなく稀有な人物に育ってますね)
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