珍獣扱い

「あ~、やっと終わった。今日は忙しい一日だったなぁ…」

「合計四十万匹の魔獣討伐と武装蜂起した数百人の捕縛を、忙しかったで済ませますか」

「だって、働いたのはほとんどアルとドローンじゃん」

「ティナは八万匹以上の魔獣を倒してるんですがね。王太子との映像会談があったので聞きそびれましたが、何ですかあの攻撃は? 一発撃つだけで、十匹以上倒してましたよね?」

「あそこってそんなに広くなかったから、魔獣が密集して奥まで並んでたじゃん。だから貫通力重視の矢を放ったの。一発ずつ照準するのも面倒だったから、頭の高さあたりを水平に進むようにして適当に撃ってた」

「それで発射後に軌道が曲がってたんですね。ドローンには出来ない芸当です」

「魔法って便利だよね。自分の魔素制御範囲内なら、撃ってからでも軌道曲げられるんだもん」

「その結果があれですか…。ティナと同じ戦果を得ようとすると、大型ドローン五十機は必要ですね」

「前回からいきなり増えたね。バンハイムの時は、五機って言ってなかった?」

「レーザーでは十匹以上魔獣を貫通させるなんて無理ですからね。しかもあの経戦能力は、驚嘆に値します」

「やっぱ魔法って便利よね」

「……はぁ」

「あ、ため息吐いた! 幸せが逃げるよ!」

「だったら、ため息によるストレス軽減効果が必要になるようなことを、平然としないでください」

「む、それはなんかごめんなさい」

「まあいいです。それと、作戦行動中でしたので私が代理応答しておきましたが、クラウから新年の挨拶に向かいたいとの連絡が入っていました」

「おや、そんな連絡あったんだ。う~ん、どこで歓待しようかな?」

「他領領主からの新年の挨拶となると公式行事ですから、普通はこの城では?」

「そうなんだけど、せっかくだからまた御所で羽根延ばして欲しいかも」

「ああ、それでですかね。クラウが少し話しにくそうにしていました」

「メンバーは言ってた?」

「女子会の時の三人ですね。アルノルトは空を飛ぶのが苦手なそうです」

「そういえば、最初にクール君に乗った時も固まってたね。窓に近付こうともしなかったし」

「お年寄りは労わってあげましょう」

「じゃあ、迎えに行く時に船盛でも持って行ってあげよう」

「ティナが迎えに行くと、そのままシュタインベルクでの歓待になりませんか?」

「む、それはありそうだな。じゃあ私は先に御所に行って、デミちゃんの誰かに迎えに行ってもらおう」

「連れて行くデミ・ヒューマンはメンバーを入れ替えてください」

「え、どうして?」

「前回女子会に同行出来なかったデミ・ヒューマンたちから、次回のメンバーチェンジを要求されています」

「何でそんな要望が…」

「前回メイドとして同行した者たちが他の者に様子を吹聴しまして、次回の同行希望者が殺到しています」

「あぁ、空いてる時間は施設自由に使ってもらったから、楽しかったのか。これはデミちゃんたちの保養施設としても、御所使った方がいいな」

「それもあるのでしょうが、一番の理由はティナのプライベートのお世話が出来たことらしいのです。普段ティナは、この城だと大抵のことを自分でやっていますよね」

「女子会の時はユーリアさんとカーヤさんにもお客様気分を味わって欲しくて、三人のお世話してもらうつもりでメイドとして連れて行ったんだけど?」

「ティナも一緒にお世話されましたよね?」

「だって、三人だけお世話してもらって私だけ自分でしてたら、却って向こうが気を遣うじゃん」

「普段ティナは、お風呂や着替えにメイドを使いませんよね。普段させてもらえないお世話が出来たと、同行した者は大喜びだったようです」

「なにそれ? 私って、珍獣か何かなの? 触ってもご利益とか無いよ?」

「さあ? なぜでしょうね。ですが要望が多いのは事実なので、メンバーチェンジはお願いします」

「私って、デミちゃんたちの仕事を増やさないようにしてたつもりなんだけど、ひょっとしてデミちゃん的には、お世話任せた方がいいの?」

「デミ・ヒューマンたちの個人的嗜好なので、そのあたりは分かりません」

「………なして?」

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