そっちも!?
クール君に大型ドローンは搭乗出来ないため、ティナ専用警護ドローン二機、ホーエンツォレルンにあった中型ドローン十八機と共に、ティナはランダン王国に向かった。
「ランダン王国南部の魔の森にはドローンを配置していませんので詳細は依然不明ですが、低軌道に配置した通信中継用のドローンの観測でも魔素異常が確認されました。遠距離からでも確認出来る魔素異常ですから、中規模以上のスタンピード発生が予想されます」
「…他国だけど商売相手だから、バンハイムの時みたいに魔獣減らすお手伝いしてあげよう」
「ランダン王国王城のドローンから追加情報。王都南の鉱山の町から、魔獣接近の狼煙が上がったようです」
「じゃあクール君そっちに向けて」
「あと二分で到着予定です。長距離望遠で状況確認。町の南側の城壁付近に、魔獣の群れが集まってます。後続も多数」
「南側の城壁前に降下して、クール君は空中待機しながらドローン排出。私も一緒に出るわ。城壁の上で矢を撃ってる人たちいるみたいだから、妖精王国からの救援ってアナウンスして」
「了解」
姿を現したまま急速に近付いたクール君に驚いた兵が弓を射かけようとするが、それより早く妖精王国からの救援とのアナウンスが入り、指揮官らしき人物が慌てて弓兵を止めていた。
堀の跳ね橋が上げてあったためにまだ城門は破壊されておらず、掘りの外から城門に飛びつく魔獣たちに、弓兵が必死に矢を射かけていた。
中型ドローン二機が城門の扉に爪を立てている魔獣を引っぺがし、レーザーで魔獣を攻撃しつつ城門を守護。
ティナは残りのドローンたちと空中から魔獣を攻撃しつつ、堀の前に空間を作った。
その空間にドローンたちと共に入り込んだティナは、着地した中型ドローンの上に立ったまま魔獣に攻撃を続け、どんどん魔獣の死体を量産して行った。
やがて魔獣の死骸か重なり合って戦闘の邪魔になって来ると、死骸の壁を乗り越えて堀を背に半円状にドローンを展開しつつ、徐々に半円を広げていった。
最初のうちは奥の魔獣に向かって弓を射ていた城壁上の兵も、半円が広くなって弓の有効射程近くになると、ドローンたちに誤射しないよう射るのを止めた。
弓の援護が無くなっても、変わりなく広がっていく半円と魔獣の死骸。
やがて半円の半径が300mほどになると、城門を守っていた二機のドローンも前線に入り、交代しながらクール君で充電してのローテーションを組み、半円の戦線を維持していた。
また積み上がっていく魔獣の死骸が高くなっていくと、今度はドローンが魔獣の死骸の上に陣取り、魔獣に攻撃を続けていく。
ティナは半円の少し内側で、ドローにに乗ったまま空中に浮いて、奥の強そうな魔獣を優先的に倒していく。
城壁上の兵士たちは、もう呆然と状況を見守ることしか出来ない。
数名の兵が指差しているのは、熊型や虎型も魔獣の死骸。
その死骸の存在に、兵たちの顔は引きつっていた。
しばらくそんな状況が続いたが、やがて魔獣の後続はいなくなった。
クール君で再充電した中型ドローンが後続の探索に向かうと、ティナは城壁上にいた兵たちに手を振ってからクール君に搭乗し、ゆっくりと中型ドローンの後を追った。
「ティナ、やり過ぎです」
「え、何でよ!?」
「魔獣の死骸、十万体はありますよ」
「ありゃ、大規模スタンピードだったんだね」
「中型ドローンと警護ドローンがあったにしても、大規模スタンピードを全滅させるって何ですか? ドローンは三回も再充電したのに、ティナはマナポーションすら飲んでないじゃないですか!?」
「いやぁ、魔力量増えたよねぇ…」
「ティナは今後レベル上げ禁止です」
「何でっ!?」
「すでに魔獣十万体を相手取れる強さなんですよ? もう騎士団や軍隊だって蹂躙出来ちゃうじゃないですか! それに今回の魔獣討伐数、ドローン二十機の六倍って、限度を知らないアホの子ですか!?」
「お? 私、知らないうちに強さ的な目標達成してたんだね。でも、戦闘勘失わない程度には、魔獣討伐したいんだけど」
「対魔獣戦闘用シュミレーター作ります」
「魔法撃ったら壁に穴空くじゃん!」
「エネルギー変換フィールドで覆います」
「なんかゲームっぽくって、緊張感無くならない?」
「リアルに作り込みます」
「まあ、それならいいか」
「頑張って作ります。先行したドローンからの情報ですが、後続はほとんどいないようです。魔の森内にははぐれた魔獣が残っていますが、数はそれほど多くありませんね。念のため中型ドローンを一機町に残して、ティナたちは引き上げてもよさそうです」
「じゃあこっちの対処は終わりだね。山脈の南側は?」
「あちらは超大型のスタンピードですね。魔獣数が三十万匹を超えていますので、撃破までにはあと一時間ほどかかりそうです」
「森の奥の方は、人里に出てこないなら間引き程度でいいんじゃない? 今回殲滅しても、どうせまた増えちゃうし」
「残念ながら、未だに異常濃度の魔素噴出が続いてますから、魔獣は狂乱状態で獲物を求めて走り回っています。しかもかなり広範囲に噴出したため、周囲の野生動物はごっそり魔獣化してしまって獲物がいない状態です」
「あちゃあ。だったら人里に出て来るから、殲滅するしかないね」
「はい、作業続行します」
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