残ったゴミのお片付け

「ティナ。新年早々ですが、旧帝国の占領地域で、一斉蜂起計画の情報をキャッチしました」

「あ~、やっぱいるよなぁ…。計画はどのくらい進んでるの?」

「情報の内容からすると、まだ味方を集めている段階のようです」

「小型ドローンの二割を蜂起計画の情報入手に振り分けて」

「了解。ティナの予想、大当たりでしたね。搔き集めた小型ドローンを、バンハイム方面に戻さずに正解でした」

「その分、バンハイムでの屋内情報収集能力が落ちちゃってるから怖いんだけどね」

「バンハイムも、何らかの反社会的計画が進行していると?」

「可能性は帝国側よりよっぽど少ないけどね。帝国側は、ほぼ100%だったし」

「なぜそれほど差が出るんですか?」

「バンハイムは、属領募集してないのに各領主家が向こうから臣従を申し出て来たんだよ。一応領主家内の意思統一してるはずだから、妖精王国に対して反感持ってるのは少ないと思う。対して帝国は、こちらから占領に行ったからね。証拠無くて捕まえきれなかった悪党どもは、潜伏して機会を狙ってるはずなんだ。きっとあちこちの不満分子集めてやらかすと思ったよ」

「それで小型ドローンへの諜報オプション装備ですか。まだ配備途中でしたが、今回の情報もそのオプションのおかげで収集出来ました」

「あ、やっぱり馬車かなんかでの密談?」

「今回は、秘密の小部屋にあった手紙の内容からです」

「年季の入った悪党は、悪いことがバレないように慎重に動くから始末が悪い」

「カバンや荷物の奥にしまわれて折りたたまれた手紙は、読み取るのに専用の機材が必要になりますからね」

「そこまでしちゃうと、データが膨大になってデータ処理負荷が跳ね上がるでしょ」

「荷物やカバンの中身を全数リアルタイムで把握するのは、ドローンの数的にも機材的にも不可能ですね」

「各町の門に読み取り装置付けて手紙類だけ読むにしても、スキャンデータの判別量や充電の問題もあるしね」

「それなら可能ですね」

「まじ!?」

「充電は中型・大型ドローンで可能ですし、門に自己判定機能を付けて情報を読み取る物を選別させれば出来ますね」

「負荷は大丈夫なの?」

「余裕です」

「すごいな! ドローンへの諜報オプション搭載より、先にそっち優先すべきだったか」

「試作しておきます」

「うん、お願い」

「それと、こちらはまだ懸念段階ですが、元ベールゴミ辺境伯領に隣接する魔の森内で、少しずつですが、魔素濃度が上がっていますね」

「スタンピードの予兆?」

「微々たる上昇値ですので、まだ分かりませんね」

「あそこって辺境伯捕縛して直轄地化したよね? スタンピードになった場合、対応出来そう?」

「例の修道院を取り壊して整地するために、艦が沈んでいた滝の裏に水力発電機を設置してあります。魔の森の魔獣間引き用に大型と中型のドローンを領に配備していますので、中規模までのスタンピードなら対応可能です」

「大規模なスタンピードの場合でも、プチダーナにドローン乗せてけばいいか。もう出来たんだよね?」

「完成しましたが、200m級の船にプチの名称が付くのはどうなんでしょうか」

「じゃあキャリー君?」

「物資や多くの人も運搬できるので、そちらの方がいいでしょう」

「うん、キャリー君にしよう。それで、各拠点のドローン配置状況はどう?」

「三拠点とも以前の生産量を維持出来る体制に戻り、今はバンハイムと帝国……いつまでも帝国と呼ぶのはおかしいですし、やはり新たな呼称が必要ですよ。今考えてください」

「え~。…じゃあシャルト共和国で、首都名はルーデ」

「なるほど。シャルトルーデさんのお名前にちなんだわけですね。ティナを愛しんでくれたシャルトルーデさんのように、国民を愛しむいい国に育つといいですね」

「突然うまいこと言った!」

「照れ隠しは無駄です。脳波にローアルファ波が現れましたし、リラックスホルモンの分泌も確認されました。シャルトルーデさんのように、芯を持った優しい国になって欲しいのでしょう?」

「くぅぅぅ…。お墓参りの時に、シャルトルーデお母さんのこと語ったのが失敗だった!」

「別に恥ずかしがることでは無いでしょう?」

「乙女の秘めたる思いを暴くのはマナー違反!!」

「む、失礼しました。ですが乙女の秘めたる思いとは、普通は恋心では?」

「…」

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