抱きしめて撫でてもいいアイドル?
「ティナ、お疲れさまでした」
「うん。疲れたけど、めっちゃ楽しかったよ。これは、春祭りも企画すべきかな?」
「名目はどうします?」
「少し時期を遅めにして、お花見祭りかな」
「桜に似た木は発見済みですので、移植しておきましょう」
「おお、桜っぽいの見れるんだ。ぜひお願い」
「了解です」
「出張組のデミちゃんたちは、祭り楽しんでくれたかな? 帰省した子が多いみたいだけど、ホームシックなのかな?」
「祭りが主目的の帰省です。全員が、祭りに参加したいとの申し出でしたから」
「ああ、そうなんだ。ホームシックじゃなくて良かったよ」
「ホームシックと言えなくはないですよ?」
「え゛、何で!?」
「ティナのお世話をしたいとの要望もありましたから」
「それ、お休みじゃなくて仕事じゃん」
「デミ・ヒューマン全員に言えることですが、最上位権限者としてのティナではなく、ティナ個人を慕っているようなのです」
「いや、慕われると、なんでお世話されるのよ?」
「おそらくですが、父性や母性かと」
「くっ、このなりが原因か…」
「ティナにはベビースキーマ的特徴もありますし、容姿や仕草は可愛いと評されることが多い特徴を持っています。シュタインベルクでも、よく頭を撫でられてましたよね。今更何言ってるんですか」
「むう……」
「そのふくれっ面も可愛い仕草に分類されますよ。これから出張組との慰労会、明日はデミ・ヒューマン全員との新年会です。ティナ自身が企画したんですから、諦めて存分に可愛がられてください」
「私が意図した目的と違う!」
「違ってませんよ。慰労会では出張組がティナと過ごせて癒されるでしょうし、新年会ではティナを愛でて仕事へのモチベーションを回復出来ます。デミ・ヒューマン同士も、ティナへの思いを語り合うでしょうから、一体感が深まりますよ」
「目的は達するかもだけど、思ってたのとなんか違う!」
「はいはい。さあ、広間に移動しますよ」
「ぶうぅ…」
ふくれっ面で広間に移動したティナは、出張組のデミ・ヒューマン女性陣から抱きしめられ、もみくちゃになった。
一定期間ティナと会っていなかったことに加え、お祭りで軽い興奮状態にあったデミ・ヒューマン女性陣たちは、慰労会が精神的な疲れを癒す目的だと聞かされていたため、マナーより自身の欲求を優先した。
これはティナ側に大きな原因があるのだが、ティナは気付いていない。
ティナはデミ・ヒューマンたちにとっては最上位権限保持者。
にもかかわらず、デミ・ヒューマンたちのためにと自ら動くティナに、敬愛の念をいだくのは当然だろう。
しかもティナは電子脳では思い付けないような妙案を出したりする知恵の持ち主。
平然と強力な魔獣を屠る強者でもあり、悪人を殺す覚悟すら持っている。
そして、いつまでも愛らしい容姿と言動まで兼ね備えているのだ。
知恵者であり強者であり精神的にも強いのに愛くるしい言動が似合う幼女。
そしてデミ・ヒューマンたちの感情発露を最も喜んでくれる者。
デミ・ヒューマンたちにとってティナは、直に愛でられる女神のような存在になっていた。
当のティナは楽しく食事しながら出張組の労をねぎらうつもりだったのに、女性陣の膝上を移動しながら食事を食べさせられ、男性陣からは頭を撫でられる始末。
表情変化が少なめなデミ・ヒューマンたちが満面の笑みを浮かべるため、ティナは覚悟を決めて幼女的扱いを受け入れた。
慰労という目的は大いに達せられたものの、ティナの自尊心はちょっぴり傷付いたかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます