サクッと報復
「ティナ、今日はお疲れさまでした」
「アルもお疲れ様。手伝ってくれたデミちゃんたちにも、なんかお礼しといて」
「了解です。例の暗殺者たち、クール君二号で帝城に届けておきました」
「仕事速いな!」
「無人になった宰相執務室に運び入れて、机の上に犯人引き渡し要求と謝罪金の請求書を置いておきましたよ」
「宰相の反応はどうだった?」
「盛大に顔が引きつっていました。ついでなので、暗殺者たちが使った毒を致死量未満に薄め、暗殺者が使った吹き矢で首筋に打っておきました」
「うわ、そんなことまでしてたんだ。死んで無いよね?」
「盛大に毒で苦しんでますね。暗殺を指示した映像や暗殺者が倒される様子もティナの顔が分からない方向からの広角映像で、上映映像に追加済みです」
「うわぁ、まるで死体蹴りだね。なんか報復してやろうとか思ってたけど、ちょっと可哀そう…でもないか。ただの自業自得だな」
「処分許可ください」
「う~ん、それはまだいいや。事前に暗殺計画察知出来てたし、会場警備してたドローンが暗殺者潜伏してるの掴んでて危なくも無かったから」
「…残念です。ところで、なぜ専属の暗殺部隊を持つとバカなのですか? 各領主の前でしたので聞きませんでしたが、よかったらそう判断した理由を教えてください」
「あぁ、あれか。専属っていうことは、自分のためのものってこと。じゃあ自分の敵を暗殺する命令出しても、誰も止められないよね。そんな恣意的に使える部隊を政治実務の管理者である宰相が持っちゃったら、政敵殺しまくって周りにイエスマンしか残らないよ。多方面から色々な意見を聞いて政策を決定すべき宰相と言う地位にある者が多様な意見を封殺する部隊なんか持つなんて、職責と真逆しちゃってるじゃん」
「なるほど。宰相と言う地位にある者には、決して持たせてはいけない部隊という意味でしたか。あと、気になることがもう一点。ティナは今回直接手を下しましたが、大丈夫ですか?」
「不調なように見える?」
「見えないから心配なんです。精神的負荷も増えていないようですし、今話していても普段通りだと感じます。なぜですか?」
「だってあいつらは人殺し専門部隊だよ。しかも暗殺部隊ってことは、公には処分出来ない人を対象にしてるってこと。だからこれ以上理不尽に殺される人が増える前に、止める力を持ってた私が手を下しただけ。前にも言ったと思うけど、私はあんな奴らを人だとは思えないんだ」
「その割に宰相は処分しないんですね」
「私が考えてたことをすでにアルがやってくれてるから。アルは宰相が回復したら、もう何もしないの?」
「…黙秘権って、私にありますか?」
「当然あるけど、それってすでにバレちゃってるよね?」
「いいんです。黙秘します」
「はいはい、分かりました。それじゃあ話題換えよう。騒いで説明会邪魔した奴らは、誰の命令で動いてたの?」
「そちらはまだ未確定です。他家の領主との密談は映像記録がありましたが、首謀者からの指示はおそらく手紙だと思います。多くのドローンを映像上映に回していますので、手紙までは詳しく確認出来ていません」
「そっか…。じゃあ扇動失敗して×マーク喰らった映像を流して、実行犯たちに恥を掻かせてあげよう。それを見た首謀者は、多分怒り狂って、そのうちポカやらかすでしょ」
「…なるほど。指示した者が見れば、すぐ次の手を打って来るでしょうね」
「今回説明会を邪魔しようとしたのは、各領が妖精王国への臣従することを首謀者が危険視してるってこと。帝国内の領が他国へ臣従するのを邪魔するわけだから、首謀者は多分帝城の運営陣か、貴族派閥の長あたりだろうね」
「残った説明会出席者は、妖精王国への臣従に前向きなようでした。臣従する領が増えれば、焦って強引な手に出るでしょうね」
「そこをキャッチ出来ればいいね」
「もう少し情報収集密度を上げてみます」
「うん、お願いね」
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