臣従勧誘計画

軍務卿捕縛後、元帝国領だった二領には、近隣領の視察者が訪れるようになった。

妖精王国に臣従替えしたことで軍や武装集団の入領は禁じたものの、他は今まで通りに通している。

他領の貴族たちも、事前に手紙でやり取りして入領目的が妥当なら、普通に入領させていた。


ダーナという強烈なインパクトがあったために近隣の領が偵察や視察に来るのは当然で、二家には何家からもの使者や視察者が訪れていた。


用件は大抵同じで、一番多いのは侵攻意志の確認。

ダーナを見た以上、恐ろしくなって妖精王国の意向を確認したくなるのも当然だろう。


そして次に来る質問は、妖精王国への臣従条件と妖精王国からの支援内容だ。

臣従替えにはいくら積まねばならないのか、上納金はいくらなのか、領地防衛には手を貸してもらえるのかなどなど、臣従替えを前提とした質問ばかり。


他領が妖精王国への臣従替えに前向きなのは、ダーナの出現と軍務卿捕縛時の映像上映が大きく関係していた。

軍務卿捕縛時の様子が流れたことで、理不尽な軍務卿の要求や強行手段を、一瞬にして無力化する妖精王国の強さが示された。

汚職まみれの帝都からの理不尽な要求ににうんざりしていた地方領主たちは、妖精王国に光明を見出したのだ。

帝都からの理不尽な要求を断って、万一軍を差し向けられても、あの大きな船が守ってくれるのではないか。そんな期待で、先に臣従替えした領を訪れたのだ。


視察結果は期待以上だった。

領地を妖精王国に預けて代官になってしまうが、いつ臣従を辞めてもいい上に領地は戻って来るし、罰則すら無い。

しかも妖精王国からの支援内容は、驚くほど魅力的だ。

上納金が無いどころか、飢饉や災害時には無償での食糧支援と災害復旧、疫病発生時には無償で特効薬が配られる、治安維持は機械妖精が手助けしてくれる、スタンピードや万一他領から侵攻されても御座船や機械妖精が守ってくれる。

もう詐欺にすらならないホラ話に聞こえるが、実際二領はそうなっているのだ。


使者たちは少しでも早く主人にこのことを伝えようと、早馬に乗って帰って行った。


そして二家には、次々と臣従仲介の依頼が押し寄せた。


ティナは臣従依頼に個別に対応するのではなく、妖精王国臣従説明会を企画した。

バンハイム共和国の属領やシュタインベルク自治領、ホーエンツォレルン直轄領を映像で紹介し、アガッツィ男爵とフィオリ子爵に映像の正当性を証言してもらう。


次にバンハイム共和国、アガッツィ男爵領、フィオリ子爵領での支援や活動を紹介し、属領化後に起こった犯罪や問題点への妖精王国の判断と対処も映像で紹介することにした。


説明会は一か月後。屋内では参加者が入りきらない可能性もあるため、フィリオ子爵領にある草原に、ミニコンサート会場を設営して行う予定だ。

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