どっちもどっち
一方のティナも、デミ・ヒューマンを生み出す時のように、長く考え事をしていた。
アルは自身の製造物を人に使って喜ばれることをうれしく感じている。
これはティナがアルを当てにすると、アルフレートの表情がうれしそうなので多分間違いは無い。
ティナはアルが嬉しそうだと、自分も嬉しくなる。
これはティナ自身が感じている事なので、やはり間違いは無い。
だからアルの力を十全に使えるようにしようと、妖精王国として前に出て影響力を拡大し、結果多くの住民たちに対してアルの力を揮えるようになった。
これも間違い無いはずなのに、なぜかアルは、前のティナの方が幸せそうだったと言う。
そしてティナが幸せそうなのが、アルにとって一番なのだと断言している。
アルがティナの幸せを思ってくれるのは、ティナ自身すごくうれしい。
だからアルに幸せのお返しをしたくてティナは頑張ったはずなのに、ティナ自身のせいでアルの感じる幸せが下がっているかもしれない。
妖精王国の友好国であるシュタインベルク女王国を発足させて、ランダン王国をも吸収。
そして今回属領化した元帝国領を足掛かりに、ガイゼス神聖帝国自体を属国化しようとまで考えているティナ。
現状アルはドローンを増産して新しい航空機も作り、自身の能力アップのために大規模なデータ処理センターまで作り出した。
今のアルなら、ランダン王国や帝国を傘下に収めても、充分コントロール可能なはずだ。
ひょっとして、アルの能力を十全に使おうとしすぎて、アルに無理を強いたのだろうか。
だけどアルは、ティナの多忙を理由にして自重させようとしてくる。
それにティナの年齢や容姿への言動もおかしい。
ティナの能力が高いことはアルにとっていいことのはずなのに、なぜか幼女らしくして欲しいようだ。
何度考え直してみても納得出来る答えはなかなか出ず、悶々と今後の方針に悩むティナだった。
だが、答えは意外に簡単だ。
ティナもアルも、自分より相手のことを優先しすぎているだけだ。
ティナはアルが活躍すればもっと幸せになるだろうと、ティナ自身の願いであるのほほん生活よりアルが活躍出来る環境を望んだ。
アルはティナがのほほん生活よりアルの活躍を優先したことで、ティナの幸福度が減るのではないかと心配しているだけだ。
お互いが相手の幸せを第一に行動してしまっているからこそのすれ違い。
しかも双方にかなりの実力があるために、一方は国家を樹立したり属国化しようと策を練っているし、もう一方はドローンや新型の機体を作り、自身の能力アップまでしてしまっている。
ある意味似た者同士だが、なまじ双方の能力が高いだけに周りへの影響が大きすぎる。
隠居して二人でのほほん暮らしするのが一番良さそうだが、二人がそのことに気付くのは、一体いつになるのだろうか。
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