デミちゃん、魔法使えたって

「ティナ、引率お疲れ様」

「いや、実際に頑張ったのは、ドローンとデミちゃんたちだし。それに、結構楽しかったよ」

「それはよかったです。ですが、お仕事の話をしてもいいですか?」

「うん、今からお仕事する気だから」

「では、まずはランダン王国に占領された町で、ティナの偽物が詐欺を働いているようです」

「は? 何それ?」

「妖精の巫女を名乗る少女を連れた一団が、祈り続ければ妖精との親和性が上がるという石を高額で売って回っています。ですがその石はただの方解石で、何の効果も無いようでした」

「…霊感商法?」

「そのようです。情報収集のドローンが酒場などで複数の話を収集しましたが、充電設備がありませんのでドローンの展開効率が悪く、未だ犯人は補足出来ていません」

「ドローンとはつため君を追加派遣。手口を書いた紙を周辺の町にばら撒いて。犯人見つけたら、やけど×マーク。少女は…他の大人より深達度下げて」

「了解。次は北部沿岸領の監査官からですが、塩害がひどく作物の育成には不向きで、小舟しかないために漁業収入も僅か。何か方策は無いかとの問い合わせです」

「うーん…。昆布、ホタテ、カニあたりが捕れるなら、買い上げて冷凍空輸。うちで消費しきれない分は、クラウに低価格で購入依頼」

「はい、指示しました。後、旧バンハイム首都ですが、新たな呼称はどうしますか?」

「ああそうか、もう首都じゃないよね。バンハイムの一番東だから、東都で。国名は…もうバンハイム共和国でいいや」

「了解です。その東都の代官からですが、兵を半分ほど転職させたいとの要望が出ています」

「そうだった。ランダン王国を警戒して兵が詰めたままだから、維持費が嵩んでるよね。じゃあ、南部での魔獣討伐兵への配置替えか、西部の甜菜・綿花栽培農家への転職を打診してみて」

「はい、そうします。次は少々厄介な話ですが、各地で貴族家の婚約破棄が起きています」

「は? 婚約解消じゃなくて?」

「破棄です。原因は、バンハイム全体が妖精王国の属領になったことで、婚姻による貴族家同士の繋がりのメリットが薄れたためですね。領主家同士の婚姻なら兵力の融通や政策の共同歩調が執れましたが、現状では妖精王国の許可が無い限り両方とも不可能ですし、やっても意味がありませんから」

「いや、それは予想してたけど、何で白紙撤回じゃなくて破棄なのよ?」

「おそらく男尊女卑の弊害ですね。すべて男性側からの一方的な婚約破棄です」

「…破棄した側に相応の違約金支払いを妖精王国の名で命じて、その命令を理由付きで公表」

「分かりました。最後に、デミ・ヒューマンのレベルアップ実験で、デミ・ヒューマンが、魔法を使えました」

「ほへっ、まじ!?」

「効果は小規模ですが、水の生成が確認出来ました。やはり身体が生体だと、魔法が使えてレベルアップも出来るようです。」

「いいねいいね。希望者募ってレベル上げしてみよう」

「……監査官含め、全員が希望するそうです」

「返事早いな! でもそうなるか。魔法って使えると楽しいもんね。魔核のストックは?」

「ホーエンツォレルン領周辺でドローンによる魔獣の間引きを定期的に行っていますので、全員を十段階ほどは上げられそうです」

「じゃあローテーション組んで、レベル上げと魔法習得実習に魔獣討伐しよう。魔素の疎密波パターン、私のが記録してあるよね?」

「ティナの使える全魔法を記録済みです」

「最近忙しくて魔獣討伐に参加出来てなかったから、ちょっと戦闘面でなまってるかも。私も出来るだけ討伐に参加するよ」

「スケジュールを調整します」

「うん、お願い。それで、うちの領民さんたちの様子はどう?」

「かなりここに慣れたようです。試験的に店を開いた者もいますし、開業に向けて技量を上げている者もいます。ただ、日がな一日のんびりしている者もいますので、就職に向けたカウンセリングが必要かもしれません」

「第二期の移民は長期の浮き草生活に疲れてるだろうから、もうしばらくはゆっくりでいいよ」

「はい、では観察に留めます」

「新たなデミちゃんたちはどんな感じ?」

「個性の習得方法が確立出来ましたので、順調に個性を得ていますよ。移民たちのサポートが良い刺激になっているようで、個性の育ち方が早く、性格も多岐に渡ります」

「そっかぁ…良かった」

「子どもたちと一緒になって遊ぶ者もいますので、少々困りものですが」

「いや、それでいいんだよ。デミちゃんたちは最初から規範意識があるんだから、楽しさを覚えていって欲しいな」

「凝り性になる者が多すぎる気がします」

「規範意識が高すぎて無個性になっちゃうより、はるかにいいよ」

「統率を取るこちらの身にもなってください」

「アルの統率能力が上がっていいじゃん」

「…ソウデスネ」

「棒読みだー」

「…」

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