ドローンも、電力も足りない
「アル、ドローン一気に増えちゃったけど、操縦や収集情報分析の負荷、大丈夫?」
「旧艦が修理完了しましたし、ハルシュタットと孤島にデータ処理センターを作りましたので、処理負荷は10%ほどですね」
「え゛一割?」
「はい。現在も拡張中ですので、完全稼働時の予想負荷は、3%程度になります」
「とんでもない容量と処理能力な気がする…」
「母星の艦隊運用システムを参考にしました」
「知らないうちに、アルのスペックがさらにぶっ飛んだことに…」
「元々孤島とハルシュタットにはに、大規模な処理センターを建造中でしたからね。ただ孤島とは通信回線が細かったので、低軌道に高性能通信機能を搭載したドローンを、旧艦を静止衛星軌道に置いて中継しています」
「知らない間に宇宙開発までしちゃってた」
「宇宙開発って、艦を静止衛星軌道に置いただけじゃないですか。惑星防衛システムや宇宙船建造ドック、宇宙ステーションすらありませんよ」
「ああうん、開発の定義が違ったね」
「そんなことより、デミ・ヒューマンを各領の監査官に派遣する件は、男性タイプ十四人でいいんですよね?」
「男女ペアにして任期一年はどう? 任期明けは職業や居住地自由選択で」
「ハルシュタットへの移民指導も落ち着いてきましたので、人員的には可能です。しかし、女性も派遣するんですか?」
「うん。デミちゃんたちがひとりで奮闘するのは避けたいんだよ」
「なぜ男女ペアなのですか?」
「男性ひとりだと、アホなハニトラとか無駄に仕掛けられそうでしょ。それと、女性の社会的地位向上狙い。妖精王国は男女平等だって示したいの。だけどおバカな男尊女卑野郎とかいそうだから、スタン系の護身具も欲しい」
「小型護身具を作成します」
「目立たないように、バングル型とかもいいな」
「バングルだとバッテリー容量に不安があります。携帯用とバングル型、二種類作ります」
「ドローンの警護は、ひとり二体態勢で」
「それならバングルタイプもワイヤレス充電できますね。了解です。あと旧バンハイム首都の充電基地はどうしますか?」
「あそこは領事館用のお屋敷買ったでしょ。庭で発電蓄電用航空機を使おう。南の山脈にある充電基地で、個体水素作れる?」
「機材を搬入すれば出来ますよ。旧首都との距離的に、ドローンでの個体水素輸送も可能ですね」
「お屋敷改装する時に、屋根材はソーラーパネルにして」
「そのつもりです。駐在員はどうします?」
「領事館に監査官を住まわせればいいよ。使用人は雇わず、ドローンで代用。万一制圧されても放棄出来るように、なるべく据え付け型の機器は使わないで」
「では、屋根材に偽装したソーラーパネル以外は、撤収または放棄可能な物にします」
「うん、お願い。それとランダン王国の動きってどう?」
「やはりバンハイムのあちらこちらに間者がいそうですね。王都の東にある町の駐留部隊が、バンハイム各地の恭順と共に、徐々に兵力が減っています」
「小麦の生産状況は?」
「既存の畑だけでなく、本国から人を派遣して、平原部を開拓して畑にしています」
「なら、新たな攻勢はなさそうだね」
「はい。ランダン王国の商人が、早くも鉄製品を売り込みに来ていますね」
「バンハイム王国は無くなっちゃったから、終戦したって事にして流通再会させるのかな。軍の動向監視程度で良さそうだね。他になんかある?」
「北部住民の健康状態が良くないですね。食料支援してもいいですか?」
「いいけど、何を支援するの?」
「栄養バランスの良い、乾燥食料がいいでしょう。支援中にライ麦の畑を農地開拓します」
「水害地域にも乾燥食料支援してるけど、足りるの?」
「ストックはかなり減りましたが、アオラキの地下畑が再度収穫出来ましたので、再製造中です。それに三食をすべて乾燥食料で賄うのではなく、既存の食事に一品足す程度の支援ですから」
「じゃあ監査官の赴任時に、各領への無償支援として送ろうか。監査官の印象も良くなるだろうし」
「いいですね、そうします。あと、ハルシュタットの地下を広げて、新型ローバーの製造ラインを作ってもいいですか?」
「監査官の足にするための、航続距離と速度を上げたやつ? もう設計出来たんだ。でも、ここだとバンハイムに展開しにくくない?」
「製造はハルシュタットに絞って、拠点用基地は山脈の充電基地の地下を拡張する予定です」
「あそこなら展開はし易そうだね」
「ティナ発案の燃料電池とのハイブリットに設計変更したので、山脈の充電基地で個体水素を作れば、運用効率が格段に上がりますね。燃料だけをカートリッジ式にして運搬する発想はありませんでした」
「以前のアルの仕事なら艦を現地に派遣しての拠点化で済むけど、ダーナはでかいから威圧感大きいでしょ。こっちだと広範囲を小型機だけでカバーしなきゃいけないから、ダーナでの補給だと各地を巡回しなきゃいけなくなって非効率だし」
「充電のためにダーナを巡回派遣させるのは、非効率にもほどがありますね。小型ドローンにカートリッジを持たせるだけで燃料補給が出来るのは、大変便利です」
「バッテリーパックの交換式も考えたんだけど、エネルギー源だけ運んだ方がコンパクトだし、充電時間も要らないから」
「部品点数が増える分製造コストや故障率は上がりますが、ダーナが巡回することに比べれば、はるかに低コストで効率もいいですから」
「私としては、とんでもない発電効率の燃料電池にびっくりなんだけど」
「それは単に、技術レベルの違いですから」
「電池交換するノリのローテクが生きるとは思わなかったよ」
「使い捨て社会はさすがに容認出来ませんが、再使用可能なら利用価値はあります」
「そうだね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます