ムードメーカーカーヤ
「……私、思ったほどは壊れてはいないの?」
「壊れてすらおりませんぞ。困窮する善人には救済を、他者を傷付ける悪人には罰を。誰しもが思うことでしょう」
「…そうなのかな。私、普通の女の子だったらうれしいな」
「普通って……。ティナ様もクラリッサ様も、成人すらしてないのにそんなにも深く物事考えてるじゃないですか。お二人が普通だったら、私は大馬鹿になっちゃいますよ!」
「それは違うわ。わたくしは領主という立場だから、ティナはアルさんの力を使える立場だから深く考えなければいけないだけ。単に立場に付随した義務なのよ」
「…私、お二人の立場じゃなくて良かったです」
「馬鹿者! ご領主様やティナ様に対して、なんということを!?」
「爺、おやめなさい。カーヤはわたくしたち二人が背負っている義務の大きさに気付いて、素直な心情を零しただけよ。素直なのはカーヤの魅力だけど、素直すぎると叱られるわよ。『立場じゃなくて良かった』ではなく、『立場には立てそうにありません』くらいにしておくべきね」
「あう、すみません」
「あはは、カーヤさんはすごいもの持ってるよ。さっきまでの重苦しい雰囲気が、一瞬にして吹き飛んだもん。男性に可愛がられそうな性格だよね」
「あの、ティナ様? そのお姿で、何言ってんですか!?」
「あ、私幼女だったや。てへへ」
「ぷっ! ティ、ティナ、笑わせないで。うぷぷ」
「いや、カーヤさんが突っ込み入れてくれたから、ボケなきゃダメかと思って」
「いや、ボケられてませんて! 見たまんま幼女ですから!」
「むう。芸人の道は遠いな」
「あははははは。止めて、苦しい」
「あーあ、カーヤさんやっちゃたね。ご主人様の腹筋崩壊させたから、給金査定マイナスだね」
「なんでっ!?」
「ぶははははは!」
「クラリッサ様、はしたのうございますぞ!」
「お給金減っちゃう!? ユーリアさん、助けて!!」
「ちょっと! せっかく存在感消して空気してたのに、こっちに振らないでよ!」
「なんかしゃべんないなと思ってたら、ひとりだけ巻き込まれないようにしてた! ユーリアさんずるい!!」
「ティナ様とクラリッサ様、アルノルトさんがお話をするのよ! ついて行けるわけ無いじゃない!!」
「私、頑張って会話に参加したのに、お給金減っちゃうぅぅぅぅ!」
「だからって私に縋っても、どうにもならないでしょうが!」
「ひぃぃぃん!」
クラウが笑い転げ、ユーリアとカーヤが騒ぎ出したために場の収拾がつかなくなり、雑談会はお開きになった。
やっと笑いのツボを脱しかけ、片手でお腹を押さえて緩んだ顔が戻らなくなったクラウを見たティナは、思わずいたずら心が湧いて『ノルノルコンビ』とささやいたら、クラウの爆笑が再発してテーブルてしてしが始まった。
笑いの燃料をもっと投下しようとしてアルノルトに睨まれたティナは、目を逸らせて追撃を止めた。
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