お風呂でぷかぷか
「ティナ、それは魔法ですの?」
「え? ああ、これは息を溜めて力抜いてるだけ。仰向けで力抜いてると、身体は浮くんだよ」
「嘘ですわよね? 人は水で溺れますわよ」
「仰向けになって息をいっぱい吸い込んで、顔の表面だけお湯から出てるようにして見て」
「……何ですのこれ!? 体が浮いてうわっぷ!」
「しゃべると溜めた息が減るから沈むよ」
「ティナはしゃべっているではないですか」
「息吐く時は、腕でお湯を掻いてお湯を下に押してるの。だから押した反動で浮き上がってるだけだよ。ほら、こうするとよく分かるよね?」
「腕と掌でお湯を撫でてますの?」
「ほんの少しだけ斜め下に押すように角度付けてね。戻す時に反対の角度付けなかったら、前に進んじゃうよ」
「………難しいですわね」
「じゃあ魔法使えば? 地上にいる時の十分の一の力で、お湯やお水の中だと身体を持ち上げられるから」
「……簡単に浮きましたわ」
「少し浮かせる方向を斜めにしてみて」
「…進みますわね」
「仰向けだと、背中がお湯を斜め下に押してくれるから、後ろに進んだ方が楽だよ」
「…簡単に進みますわね。海の近くの方は水の中でも沈まないと聞いたことがありますが、こういうことでしたの?」
「魔法は使ってないだろうけどね。慣れるとほら、こんなに早く進めるの」
「…確かに早く進んでいますが、その、足を広げるのはどうかと思いますわよ」
「あはは、じゃあこんなのは?」
「…それ、足をばたつかせているだけですの?」
「きちんと足をつま先まで伸ばして、太ももから足先に水を押し流すような感じ。手は上半身が沈まないようにお湯を下方向に押し下げてるの」
「…魔法も使わずにお湯に浮けるなんて、器用ですわね」
「お湯を下方向に押す感覚や、斜め下に押し流す感覚に慣れると簡単なんだよ」
「ティナ様、お湯の中で魔法で身体を持ち上げると、簡単に浮くのはなぜですか?」
「お湯を身体で押し広げてるから、お湯が戻ろうとして身体が押し上げられてるのよ。重い大木でも水に浮いちゃうのは、水を押し広げる力より水が戻ろうとする力に負けちゃってるの。石みたいに小さくても重い物は押し広げる力が小さいから沈んじゃうけど、それでも押し広げようとしてる分軽くはなるよ」
「…ティナっておかしな知識を持ってますわね」
「……こういうのを覚えてないと、テストされて叱られるんだよ」
「大変そうですわね」
「今は楽だよ。アルもいるから忘れてても教えてくれるし、かなり楽しく過ごせてるの」
「それなら良かったですわ。そろそろ上がりましょうか」
大浴場でみんな(アルアルコンビは除く)で楽しく入浴したので、ティナの気力はかなり回復したようだ。
お風呂で泳ぐなどマナー違反だが、プチ水泳教室をして気力の回復には役立ったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます