感謝攻撃はダメージがでかい
長いティータイムを終えて城にっ戻った一行は、謁見の準備を始めた。
クラウたちシュタインベルク組の着替えまで用意されていたことに四人は困惑したが、『そこはアルだから』とティナが言ったら、妙に納得されてしまった。
ティナたちは着替えを済ませて予備執務室に移動し、元聖堂騎士たちを待った。
今回ティナが予備の執務室を使ったのは、謁見の間が荘厳すぎてヤバいから。
総大理石の作りになっていて、随所に細かな彫刻がなされ、カーペットや紋章絨毯も豪華すぎるのだ。
出来が良すぎて威圧感が半端ないのである。
対して予備の執務室は客人の執務用に作られているので、内装や家具がおちついた雰囲気になっている。
来客用のソファーも用意されているので、謁見というより会談といった雰囲気になるため威圧感は無いだろう。
木彫り細工が多用されているためにどこの王族の執務室かと思われそうだが、バロック様式の大聖堂も真っ青な謁見の間よりは、かなりましだ。
やがて到着したのは、元聖堂騎士の六人。遺族の同道はひとりもいなかった。
執務室に入った六人は、いきなり跪拝して挨拶を始めた。
まるで王に拝謁する騎士のようだ。
執務机に就いたクラウは跪拝など止めさせたかったが、挨拶の口上を遮るのは無礼。
口上が終わるのを待ってアルノルトが六人に立つよう促したら、今度は直立不動の姿勢だ。
楽にするよう言ってもそのままで、ソファーに座ることも固辞され、仕方なく話を進めた。
元聖堂騎士たち六人から語られるのは、まるで懺悔のような謝罪。
派兵はカリアゼス教中央教会の暴挙であって聖堂騎士たちは被害者に近いと言っても、切々と謝罪を口にするのだ。
クラウは、実行犯個人からの謝罪として受け取ると言って、延々と続きそうな謝罪を終わらせた。
だが、次に来たのは感謝の嵐。
六人が各々に感謝を述べるため、これまた終わりが見えない。
そして感謝は、クラウの横にいたティナにも飛び火した。
ティナはクラウの指示だから治療したと言いたいが、クラウが内心感謝にうんざりしているのが分かるために、笑みを張り付かせてひたすら耐えていた。
やっと感謝の嵐が終わったかと思えば、今度はハルシュタットに受け入れて貰ったことへの感謝に移行。しかも他の移民たちからの感謝まで伝えられ、ティナのHPは全損寸前になった。
やっとのことで次の話題に移ったものの、今度は遺族たちからの感謝を代理として伝えられた。
曰く、仇はカリアゼス中央教会の金の亡者たち。
その亡者たちを妖精の力を使って処刑に追いやってくれたことで、仇を討ってもらったと感謝しているというのだ。
しかも働き手や行き場を失った遺族たちまで受け入れて生活を保障するなど、どこの聖人君子かとおもいきり持ち上げられてしまった。
ティナはHPがマイナスになって崩れ落ちそうになったが、魔法を使って姿勢を維持して、魔力制御に集中することでその場を乗り切った。
やっとの思いで六人を送り出し、その場に崩れるティナと机に突っ伏すクラウ。
アルアルコンビからの叱責は、さすがに同情されたか、飛んではこなかった。
「ティナ。わたくしこれからは、ティナへの感謝は心を込めた一言だけにいたしますわ」
「ありがとう、助かるよ。今日はもう、何もする気になれないや」
「そうですわね。感謝を受けることが、これほど体力を消耗するとは思いいませんでしたわ」
「だよね。申し訳ないけど、私後半は話が耳に入って来なかったよ。何か重要な事、話してなかった?」
「いいえ、感謝だけでしたわ。先ほどのティナの魔法、声を遮断したのですか?」
「いや、崩れ落ちそうな体勢を、魔法で一生懸命保ってたの」
「死与虎さえ屠るティナにそれほどのダメージを与えるなんて、ある意味すごい人たちでしたわね」
「私、お礼に対しては防御力紙装甲っぽい」
「うふ、やめてくださいまし。ティナが紙の鎧を着ている姿が、思い浮かんでしまいましたわ」
「食事の前にお風呂に入って、ダメージを回復しますか?」
「アルまでダメージって言っちゃってるし…。そうしたいけど、今は動く気力が無いの」
「抱っこで運びましょうか?」
「……魔法使って浮いてく」
「了解です。ではみなさん、大浴場に移動しましょう」
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