魔性の幼女→ただのマスコット?
「チビで寸胴でぺったんこなのに、魔性って何よ!? しかも幼女付いてるし!!」
「ほわぁ~、しあわせですわぁ…」
「ちょ、クラウ、頭に頬擦りしないで。話しにくいから離れてよ」
「やです」
「アルノルトさん、助けて」
「ほっほっほ、微笑ましいですなぁ。ここ数年クラリッサ様はご政務ばかりでしたから、お歳相応のご様子が拝見出来て爺はうれしゅうございます」
「ちょ、マナー的指導は!? アル、助けて!」
「なぜでしょう。今しばらくこの光景を見ていたいのですが…」
「味方がいない!?」
「嫌なのですか?」
「嫌じゃないから対処に困ってるの!」
「ティナ、例の修道院のせいで、おそらくあなたは幼少期から抱きしめられることに慣れていないのではないですか?」
「冷静に分析してないで、助けて!」
「クラウ、ティナが涙目になって来ていますので、そろそろ解放してあげてください」
「え? あ、ごめんなさい。虐めるつもりなど、全くございませんでしたのに…」
「ティナは虐められたなどとは思っていませんよ。ただ感情が溢れそうになって、対処に困っていただけです」
「そうですの?」
「……うれしかったり恥ずかしかったり、なんか色んな感情がいっぱいで、なぜだか涙が出てきちゃったの。だけど、嫌だったわけじゃないと思う」
「ごめんなさいティナ。我儘が過ぎましたわ」
「えっと……うん。なんだか訳分かんなくなるから、加減してくれると助かります」
「肝に銘じますわ」
「ティナ、住民たちのところに行っているフィーネから連絡です。元聖堂騎士たちがクラウに謁見を求めていますが、どうしましょう?」
「わたくしかいることをお伝えしましたの?」
「実は、この町の人たちにもドローンや飛空艇を見せるのは初めてなの。正式に招待したクラウに見せるからって、事前説明と混乱防止に何人か家人を町に派遣してたの。勝手に話しちゃってごめんね」
「他領の領主が訪問するなら、事前に住民に知らせるのは当たり前ですわね。でも、なんの御用でしょう?」
「おそらく無断越境事件の謝罪と、その後の対応への感謝でしょう。聖堂騎士遺族の目を忍んで、こっそりフィーネに伝えています」
「…あの事件の犠牲者のご遺族もいらっしゃるのでしたわね。事件の性格上シュタインベルクがご遺族に対して補償をすることは出来ませんので、ティナが受け入れてくれて助かりましたわ。ですがわたくしはご遺族にとって家族の仇であり、生き残った方々にしてみれば同僚の仇のはず。謝罪を受けるならカリアゼス教中央教会からでしょうし、感謝を受ける身でもないと思うのですが…」
「派兵を命じた中央教会のお腐れどもは他の悪事がバレて処刑されちゃったし、生き残りの元聖堂騎士たちはしっかり改心してると思うよ」
「…爺、どうするべきかしら?」
「自身の行いを反省しておるのであれば、謝罪と感謝を受けることで、彼らの罪の意識が軽くなるのではございませんかな? いつまでも罪の意識に囚われていては、前に進む障害となりましょう」
「…そうですわね。ただ、ご遺族の方に内緒というのは確執を生みかねません。ご遺族の方の許可を取っていただきましょう」
「遺族が文句言いに来たいって言ったらどうするの?」
「受けますわ。領主として謝罪は致しませんが」
「分かった。じゃあお城の予備執務室を使って。アル、手配とフィーネへの連絡をお願い」
「了解です」
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