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翌朝、ぐっすりと睡眠をとった一行は雨音で目が覚めた。

植物にとっては恵みの雨でも、旅をする一団にとっては厄介なものでしかない。

雨の中を移動すれば体温を奪われ、余計に体力を消耗する。

そして旅の途中で体調を崩せば、命取りになりかねない。

一行はアルフレートと相談し、雨が止むまで天幕内にとどまることになった。


移動を取り止めて天幕内で過ごす一団は、アルフレートからの提案について話し合っていた。

子どもたちにひもじい思いをさせないために食料の援助は受け入れていたが、移住となると即断は出来ない。

しかも移住先は妖精を信奉する他国で、宗教の自由は認められているものの布教に関しては制限があるという。


この一団は、全員がカリアゼス教の信者。

バンハイム中央教会を見限ってはいても、カリアゼス教を捨てたわけではないのだ。

だが一方で、中央教会からは破門を言い渡されている。

つまりバンハイム国内では、カリアゼス教徒を名乗れない背教者として扱われることになる。

そんな一団に保護されている孤児たちの将来は、決して明るいものではない。


孤児を守ろうと中央教会の意向に反した意見を述べ、背教者の烙印を押された者たち。

信仰を捨てればバンハイム首都で生きていくことも可能だったはずなのに、脅されはしたものの、孤児と信仰を守って半ば自主的に首都を出た者たち。

首都での財産を処分してお金に替え、そのお金を孤児たちのために使おうとする者たち。

また、中央教会の愚行に嫌気が差し、孤児や破門された者を守るために首都を出た元聖堂騎士たち。

中央教会の愚かな命令に従って命を散らしたにもかかわらず、なにも報いようとしない中央教会に憎しみを抱く殉職した聖堂騎士の遺族たち。


それぞれの立場で半日以上話し合った結果、全員がホーエンツォレルン領に移住を決めた。

決め手になったのが孤児たちの将来を第一に考えてというのだから、この集団の大人たちは、大概お人好しだろう。


一団の回答を聞いたアルフレートは、夜間眠っている間に妖精の力で移動すると説明し、ダーナで夜間移動する許可をティナから得た。


元聖堂騎士や元助祭は夜通し起きているつもりだったが、催眠ガスであっさり眠らされてしまった。

そして、ホーエンツォレルン城で目覚めるまで、誰一人起きることはなかった。

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