シュタインベルクで綿布づくり

クラウやアルノルトが第二城壁を褒めまくっていることも知らず、ティナはハルシュタットの街づくり遊びを楽しんでいた。

すでに城や街並みは完成しているので、ティナは湖移動用の船や桟橋、牧場を作っていた。


住環境に配慮して牧場は湖の外側に作り、船で街と行き来する予定。

船はなんと、水陸両用仕様だ。

水陸両用といっても、ただ単に船底にスキー板を取り付けているだけだが。


船は街の桟橋を出て湖外側の岸に直接乗り上げ、近くの牧場まで移動する。

車輪ではなくスキー板なのは、オールシーズン対応を狙っているからだ。


本来船は漕がなければ進まないし、陸上では推進力など無い。

だがこの世界には魔法があるため、漕がなくても進む。

陸上でもスキー板があるなら、グラススキーみたいに進むことが出来る。

レベルが低いとマナポーション必須ではあるが、便利な乗り物である。


相棒のアルは、あちこちで草食動物をキャトっていた。

カルデラ壁にはシロイワヤギが生息していたが、盆地の森には動物がほとんどいなかった。

そのため、牛や豚、鶏などは飼育用に、ウサギやリスなどは森に放すためにキャトって来る。


飼育用の動物はシュタインベルクで購入した後、麻酔で眠らせて運搬。

ウサギやリスなどは、森で発見次第眠らせて運んでいる。

カルデラ内の生態が大きく変わってしまうが、カルデラ壁があるので外部には影響が無いだろうとティナは考えていた。

万一外部に出られても、そこは魔獣の森の最深部。餌になる未来しか無いのだから。


ホーエンツォレルン領は、人以外はほぼ揃ったことになる。



季節が冬になると、ティナはシュタインベルクに呼び戻された。

綿布の製造に、行き詰まりが見られたからだ。

綿繰り機や紡績機、力織機(アル設計)は先に作って貰っていたが、実際の使用は初めて。

しかも使う側も初めてなので、かなり素人臭い綿布になっていた。

試行錯誤しようにも、素人では何をどうしたらいいのかさっぱり分からない。

そこでティナが招集されたわけだ。


実はアルがドローン経由で工程を確認してすでに原因は解明されていたのだが、アルが直接教えることは出来ない。

クラウやアルノルト経由で教えても、とっさの質問には答えられないことも多いだろう。

原因を理解した上で指導出来、とっさの質問に答えられるのは、アルと脳内で会話可能なティナしかいなかったのだ。


これは、いきなりジェニー紡績機や力織機などの複雑な機構を導入してしまったティナのせいでもある。

ティナは一週間ほど、機構の改良や織機の使い方などを指導するはめになった。


綿布の出来は徐々に良くなり、一週間もすると製品として恥ずかしくないレベルの綿布が出来上がった。


次は染色や服などへの仕立てだが、これは手作業になるのでシュタインベルク家の使用人たちに任せる予定だ。

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