第二城壁の真価
季節は秋を迎え、シュタインベルクは大忙しになった。
甜菜、春小麦、綿花全てが収穫期を迎えたため、住民や兵士総出で収穫を手伝っていた。
甜菜は畑を拡張したために、収穫が昨年の三倍。
小麦畑は一部を綿花畑に流用したために収穫量が減るはずが、アル製の肥料で土がよみがえったために連作障害が無くなり、昨年とほぼ同量の収穫。
綿花は初めての収穫だが、アルが遺伝子改造しているために綿が大きく、これもかなりの収穫になった。
これから製糖や製粉しなければいけないし、綿花など種抜き、製糸、製織が控えている。
春までは、継続的な加工作業になるだろう。
そして春になれば種蒔きに忙殺され、その後は冬小麦の収穫。
シュタインベルクは、いつの間にか年中忙しい領になってしまっていた。
その分、住民の収入も激増してはいるが…。
「爺、普通は祭りって秋よね?」
「収穫を祝うことが多いので秋なのですが…」
「これ、秋にお祭りなんて、無理よね」
「無理ですな。もし行ってしまったら、開催側も領民たちも忙しすぎて、倒れかねませんぞ」
「…妖精祭は、冬にしましょう」
「賛成です。年明けの祝いとすれば、そのころには開催の余裕も出るでしょう」
「雪に埋もれる冬にお祭りが出来るなんて、第二城壁のありがたみがすごいわね」
「祭りが開催出来るほどの空間が屋内にあるのです。当初私は不要と考えていたのですが、今の利便性を見るに、見当はずれでございましたなぁ」
「第二城壁内の一階、お店はどの程度埋まったの?」
「およそ半分にございます。ティナ様からは同種の店でも複数を第二城壁内に作った方が良いとアドバイスを受けておりますので、こちらも冬中に何とか致します」
「喫茶店や婦人服専門店でしたか。きっとこれも流行るのでしょうね」
「ティナ様がおっしゃることですからなぁ…。そういえば、支所というのもございましたな」
「ええ。領主館の業務で、領民が頻繁に利用する部門だけ第二城壁内で手続き可能にするのでしたね」
「今でも領主館周辺は人通りが減っておりますに、さらに過疎化しそうですな」
「妖精商会が第二城壁内に移転したものね。でも、その方がいいってティナは言ってたわよね」
「はい。領主館では重要な業務と賓客への対応のみ行い、機密性、防犯性、安全性を高めると。確かに人通りが少なくなれば、不審者などすぐに発見出来ますからな」
「あの子、どこまで考えて第二城壁を作ったのかしら。当初は万一の時の領民の避難施設だったはずよね?」
「最初から色々な利用方法を考えておったのでしょうな。最初は規模が大きすぎると思いましたが、新たなことを始める場合、建屋を用意する必要が無いわけですから、建築にかかる経費や時間が不要となり、ことがスムーズに、しかも負担も軽く進みます」
「その上、住居でもあり避難施設でもあり全天候型の通路でもあり商店街でもあり催事場でもあるのよね。呆れるほど便利だわ」
「色々な資材集積保管所としても使っております」
「私も第二城壁内に引っ越そうかしら」
「おやめください。領主館の意味が無くなります」
「領主より領民の方が便利なところに住んでるって、どうなの?」
「防犯上仕方ございません。商店街が便利なのは当然ですが、領主や貴族は商店街には住みませんぞ」
「なんだか悔しいわ」
「…」
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