閑話 シュタインベルクの生活水準

「お嬢様。西部同盟からの使者の対応、お疲れ様でございました」

「…本当に疲れたわ。ある程度予想はしてたけど、しつこかったわね」

「ティナ様とアル殿の力は、とてつもなく魅力的ですからなぁ…」

「お二人の力は神の奇跡に近いのに。それを常時求めようなどとは、思い違いも甚だしいわ」

「そうですな。お嬢様も、妖精王国への唯一の窓口としてのお立場が各領主家に知れ渡ってしまいましたから、求婚がひどかったですな」

「西部同盟とシュタインベルクを統一して国を興すから王妃にしてやるなんて、こちらにはデメリットしか無いじゃない」

「そこをお嬢様に指摘されて、使者は唖然としておりましたな」

「王妃になること自体がメリットだと思っていたのでしょうね。シュタインベルクだけでもこれほど統治が大変なのに、十倍近い面積と領民なんて、わたくしに統治出来るわけ無いわよ」

「そこは統治レベルの違いでしょう。今のシュタインベルク領での生活は、生活水準も安全や安心も他領とは桁違いですからな」

「……領民は、そう思ってくれているかしら?」

「当然です。飢えず、魔獣に襲われず、死病すら遠ざけられる。それだけでも特筆に値しますに、安い税、清潔なトイレや風呂、ふわふわの白パンに美味しい料理、安く手に入る新鮮な肉や高級品のはずの砂糖、冬でも問題無く買い物出来る第二城壁、効き目が良く副作用の無いポーション、作物が良く育つ肥料、魔獣や盗賊などの心配が無い旅路などなど、平民の生活水準が以前と違いすぎますぞ。さらに綿製品の製造まで実現間近となれば、もう暗い未来を想像する方が無理というものです」

「仕事に追われて忘れていたわ。そういえば旧都にいたころの生活なんて、今思うと無いない尽くしで結構悲惨だったわね。ティナやアルさんの助力のおかげで豊かな今があるけど、かなりの部分を領主家で担えるようになって来ているわ」

「はい。ティナ様もおっしゃっていましたが、非常時以外は領運営が高水準で出来ておると思いますぞ。領民の笑顔が、何よりの証拠ですな」

「……そっか。わたくしたちが頑張った分、きちんと成果が出てるのね」

「左様にございますぞご領主様。今のシュタインベルク領は、どこにも負けない高い質の生活環境を領民に提供出来ております。我々は領民の笑顔のために、これからも頑張ってまいりましょう」

「そうね。そろそろ雪解けだから、今からは綿花生産と綿製品作りに注力しましょう」

「承知しました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る