第二拠点計画

「面白いって……。もうここは完成に近い状態だから、後は第二拠点作るとか?」

【ほう。それはありかもしれませんね。どんな場所がいいですか?】

「例えば、無人の火山島とか。活火山以外なら植生とか生態系も出来てるだろうし、周りが海だから天然の要塞になりそう。完全に軍事基地化しちゃえば、より安全になるよね」

【おや、兵器も設置していいのですか?】

「うん。ここは陸続きだから徒で侵攻される可能性があるからね。ここで防衛戦なんかしちゃったら、相手側の被害がとんでもないことになるもん。だからここは隠れた修理用ドックにして、万一は放棄出来るようにしよう。で、絶海の孤島なら侵攻される可能性低いし、来ても船の進行を妨げればいいから、安全性はかなり高いと思うよ」

【そうですね。大型ドローンで海中から船を牽引すれば、戦いにもなりませんね。そうすると、なぜ島に兵器を設置するのですか?】

「遠い将来、この世界の技術力が上がって空から侵攻された場合の対策と、技術力を測る試金石」

【なるほど。私の兵器を使っても上陸されるようなら、この世界の技術力も私に近いレベルになっているということですから、私の持つ技術も必要とはされないわけですね】

「うん。だから島を見つけたら、この世界の技術力がアルを上回るまでは、アルを守れる基地にしよう」

【了解です。火山活動に由来する物や海水に含まれる微量な金属の堆積とかあれば、資源としても期待出来ますね。地図作成用の高高度ドローンを飛ばして世界地図は作ってありますから、元になった画像データで候補地を探しましょう】

「世界地図なんて作ってたんだ…。あれ? そんな遠くまで遠隔操縦出来たっけ?」

【いえ、地図作成に特化したAI搭載の自動操縦です。超高高度をソーラー充電しながら惑星を周回し、帰還後にデータを吸い上げます】

「超高高度で惑星を周回って…それ、もう軍事衛星じゃん」

【攻撃機能なんてありませんよ。しかも数周で高度を維持出来なくなるので、衛星とは言い難いでしょう】

「あ、うん、そういう捉え方なんだね。もうどうせなら通信衛星とか打ち上げちゃえば、惑星全部にドローンの展開出来るのに」

【通信中継機能は母艦の艦載機での支援でしたので、機材がありませんね。作れなくはないですが、宇宙艇なので時間も資材も多く必要で、新造艦の完成が遅れてしまいます】

「…私の衛星のイメージと違う」

【ティナの衛星のイメージだと、いずれ老朽化して放棄するか、高度を維持出来ずに大気圏で燃え尽きるじゃないですか。ちゃんと回収出来なきゃ、もったいないでしょう】

「あ、はい、もったいないですね。……で、そろそろ候補地選びしない?」

【そうですね。各大陸や他の島から視認出来ない孤島は七十六か所。そのうち基地化に適した大きさのものは十二か所です】


ティナの視界には、各孤島の上空からの映像がレイヤーされた。

その中に、ティナの興味を引く島があった。


「青ヶ島? いや、カルデラ湖になってるから温禰古丹島(おんねこたんとう)の幽仙湖と黒石山?」

【ここからですと3,000km近く南に位置する、直径10kmほどのカルデラ島ですね。高高度からの拡大映像なのではっきりしませんが、植生からすると気候は亜熱帯でしょうか】

「ほうほう、暖かい地域もいいね。…ん? 3,000kmも南下したのに亜熱帯?」

【はい。この惑星は地球より大きいようで、私の不時着前の観測では、直径およそ20,000km、地球の1.5倍ほどの大きさですね】

「へぇ~、そうなんだ。あ、でもカルデラってことは火口部だよね。噴火とか怖いね」

【探査ドローンが送り込めればマントルやマグマの動きも観測出来るので、噴火の有無も予測可能ですよ】

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