え、バレてたの?
クラウに面会したティナは、まず協力しているのが妖精では無いことを打ち明けて、今まで騙していたことを謝罪したのだが…。
「ティナ、打ち明けていただいた事は嬉しいのですが…。ごめんなさい、わたくしとアルノルトは、割と以前から気付いていました」
「ほへ?」
「伝承での妖精は、いたずらしたり気に入った人を助けたりするので、ポーションや生活物資を頂いた時にはそう思えました。しかし、人の家を建てたり魔獣を倒したりするお話はありませんよ。何より、第二城壁の建造時のように、森を切り開いたりはしません」
「……じゃあ、結構前からバレてたの?」
「はい。ですがわたくしたちは助けて頂いている立場です。ティナが妖精と言うのであれば、何か事情があって妖精としか話せないのだと考えておりました」
「私もでございます。秘密になさりたいのであればと、ティナ様のお言葉通り妖精と呼ばせていただいておりました」
「……ごめんなさい、その通りなの。助力してくれてるのは、アルっていう私の…友達? 家族? 保護者?」
「どうして疑問形ですの?」
「いや、どれも当てはまるから、どう呼べばいいか迷った」
「友達であり家族であり保護者ですか。ティナにもそう思える方がいらして嬉しいですわ」
「えへ、ありがとう。でもね、アルは人の身体を持ってないから、話すことはできても、実際に会うことはできないの」
「え? それは、わたくしたちもお話し出来るということですの?」
「うん、クラウとアルノルトさんには紹介しておきたくて。アル、話せる?」
「はい。初めましてクラリッサ、アルノルト。私がアルです」
「まあ! 初めましてアル様。公私にわたり多大なご助力を賜りまして、心より感謝申し上げます」
「アル様、これまでのご助力、シュタインベルク家の家人を代表しまして、感謝を申し上げます」
「とんでもありません。私こそ、ティナと友誼を結んでいただいたことに、心から感謝しています」
「こちらこそ、とんでもございませんわ。わたくしどもはいくらアル様に感謝しても、し足りません」
「さようにございます。シュタインベルク領のみなは、アル様に感謝しきりでございます」
「うわ、感謝合戦始まった。アルもクラウも互いに感謝してるんだから、それくらいにしようよ」
「了解です。ではクラリッサ、アルノルト、お互いに感謝は受け取ったということにしましょう。あと、様付で呼ばれるのは慣れませんので、外していただけるとありがたいです」
「承知しましたわ。わたくしも感謝は頂戴しました。ではアルさんと呼ばせていただきますので、わたくしも、どうかクラウとお呼びください」
「私もしかと感謝を頂戴しました。では私はアル殿と呼ばせていただきます。私の略称と混同されるといけませんので、私はアルノルトとお呼びください」
「了解です」
「ふう、やっと半分か。残り半分も謝罪なんだけど、私、クラウに相談せずにアルに頼んで、暗殺者を送り込んだ奴らを処分しちゃったの。ごめんなさい」
「暗殺者が痺れて行動不能な状態で捕縛された時から、ある程度予想はしていましたわ。アルさんのご助力が無ければ、本来は取り逃がしていた可能性が高かったのですから、そちらも問題ありません」
「クラリッサ様、主犯や共犯は領主家による詮議が必要ですので、ご判断は少しお待ちを。ティナ様、処分されたのはこの領内でしょうか?」
「溺死した暗殺者はそう。あとはバンハイムの王都だよ」
「暗殺者の実行犯は領主暗殺未遂犯ですので、捕縛の際に死亡させても仕方ございません。主犯や共犯も他国在住となれば、こちらでは詮議すら出来ません。問題はその他国からシュタインベルク領が殺人犯扱いされるかどうかです。ですが、アル殿はそのようなミスはなさいませんでしょう?」
「当然です。全員心臓発作で病死とされています」
「さすがでございますな。そうしますと残る問題は…」
「ごめんなさい。私がクラウに相談せずにやっちゃったことが問題なの」
「…さようでございますな。主犯不明のままよりはよほど良い結果ですが――」
「爺、お止めなさい。ティナは沈黙ではなく叱られることを選んだのよ。その時点で叱る意味など無くなっていますわ」
「…確かにおっしゃる通りですな。ティナ様、今後はご相談をお願いいたします」
「はい、必ず相談します」
「じゃあこの件はおしまいね。でもティナ、誰が依頼したか聞いてもいいかしら?」
「バンハイムの国王と宰相」
「…これはまた、驚きましたな。アル殿、お嬢様への将来の禍根を絶っていただきましたこと、幾重にも感謝申し上げます」
「感謝は不要です。ティナの友人を害しようなど、許すわけがないでしょう」
「なるほど。アル殿にとってのティナ様は、私にとってのクラリッサ様ですな」
「そのようですね」
同志を得たとばかりに、笑みを深くするアルノルト。
アルの声も、若干嬉しそうだ。
アルアルコンビ、名前だけじゃなく思考まで似てないか?
「ねえ、クラウ。アルノルトさんって、過保護?」
「はい。…アルさんもですか?」
「…うん」
「「はぁ……」」
ティナとクラウ、アルとアルノルトの気持ちは、言葉以上にシンクロした。
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