修行?
【ティナ、アオラキの拠点の方には一年以上帰っていませんが、あのエリアはどうしますか?】
「うーん。あそこには艦が置いてあるし、万一のための隠遁場所みたいなものだから、地上には目立つ物置きたくないんだよねぇ。だから地上はそのままでいいや。アルはなんかある?」
【地下さえ掘削出来れば、地上部分は私にとって意味がありませんね】
「だよねぇ。ところで修理状況はどうなの?」
【残念ながら、当初予想していたより基幹フレームの変形が大きく、新造した方がはるかに早い状態ですね】
「そっかぁ、月旅行は当分お預けだね。修理はアルに任せてるんだから、地上に影響出ない範囲で自由にやって。今はこっちが楽しいから、私はもう少しこっちにいるよ」
【了解です】
「あとね、最近魔法の調子がおかしいんだよね」
【どのようにです?】
「なんか制御が上手くいかないんだよ。出力調整が荒いって言うか適当って言うか、へたくそな感じ」
【では、以前のデータと比較してみます。アイスアローを出してみてください】
「はい。…どう?」
【魔素量に揺らぎがありますね。形状も若干歪になってます】
「やっぱりかぁ…」
【いつからですか?】
「秋の終わりくらいからちょっと変だなぁって感じてた。冬にスノーボード乗った時には確実におかしくなってたよ。特に軽い物をベクトル操作しようとするとふらふらするの」
【…原因の可能性が高いのは、レベルアップによる魔力量増大の弊害でしょうか?】
「ああ、そうかも。重い物動かす方が安定してるから、少量の魔力制御が難しくなったのかも。軽い物動かす時に安定に気を配るのを冬中やってたら、少しは良くなったし」
【そうですね。秋に自宅周辺に集まって来る魔物を一掃して、急激なレベルアップで増大した魔力に、制御が追い付かなくなっているのかもしれません】
「一掃したのはアルじゃん。まあ、私は貯まってた魔核壊したけど」
【レベルアップを中止しますか?】
「やだ。理不尽に抗う力は少しでも多い方がいいから」
【私が守りますよ】
「だめ。私はアルに武力は極力使わせたくないから、私自身が強くなりたい」
【了解です。そうしますと地道に制御力を上げ続けるしか無いですね】
「おぅ、やっぱ修行か」
【自宅や私室にいる時は、極力魔法を使ってみては?】
「それだと身体がなまらない?」
【屋外での活動の方がはるかに運動量が多いですから、問題無いと思います。引き籠らなければ大丈夫です】
「そっか、じゃあそうするよ」
それからのティナは、室内での生活をほとんど魔法で行うようになった。
移動はもちろん、着替えや物を取ったりポーションを造ったりする作業も、すべて魔法でこなすことにした。
そのおかげで、ティナの魔法は少しずつ安定していった。
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