王都スラム街の孤児たちがやって来た
商人ギルドの一団と入れ替わるように、今度は別の商人に連れられた王都の五人の孤児たちがやって来た。
孤児たちは七歳から十歳までの年齢で、妖精都市で働きたいと、王都から出て来たのだ。
『妖精都市』。この名は領都シュタインベルクの通称で、主に商人たちによって広められていた。
なにせ領都シュタインベルクで善い行いをすると、なぜか帰りの旅が安全になるのだ。
魔獣や盗賊は閃光によって撃退され、荷車が壊れた場合は知らぬ間に修理用の部品が置かれていたりする。
体調が悪くなるとポーションが現れたり、急な雨に降られて旅路を急ぐと、誰かに押されているように荷馬車が軽くなる。
このような不思議現象がシュタインベルク領内でたびたび起こるため、商人たちが妖精の加護を実感して『妖精都市』と呼ぶようになっていた。
今回妖精都市に来た子どもらは、妖精の加護を信じる商人がクラウに頼まれ、わざわざバンハイムの王都まで出向いて連れて来てくれた。
この子らは妖精教会の管理に就いた二人に頼まれてクラウが移住を許可した者たちで、学舎を卒業したら職人の小間使いや下働きに入る予定だ。
王都スラム街近くの孤児院の院長は中々の人格者で、例の修道士に嘘で連れ出された二人の事を心配していた。
無事を知らせた方がいいと助言したティナが代筆して手紙をドローンで届けたところ、読後に神に祈り始めるほど敬虔な助祭。
素行不良の修道士を置いてやっていたことからも、人格者と言うよりお人好しなのかもしれない。
助祭からの返信には『二人が無事で良かった。もし将来余裕が出来たら、孤児院の卒院予定者の手助けをしてあげて欲しい』と書かれていた。
二人は学舎に通い始めて間がなく、まだ字が読めないため、ティナが代読して内容を知った。
妖精教会の二人に聞いたところ、孤児院は十二歳で出なければならないが、成人は十五歳なのでまともに雇ってはもらえず、下働きとして無給で住み込み出来ればいい方だそうだ。
ティナはクラウに相談し、年長の孤児たちに移住の意志を確認することになった。
妖精教会の二人は、子どもたちを引き取って共同生活をしたいと申し出たため、二人が住む部屋の隣をもう一戸与えることにした。
アルノルトから『不幸な子どもたち全員を助けることはできませんぞ』と言われ、ティナは『私はやれることをしてるだけ。みんながそうすればかなりの子どもが助かるのにね』と返していた。
アルノルトはティナが弱者を救済しすぎて困窮することを心配し、ティナは自分が出来る範囲しか手出ししないと返したのだ。ちょっぴり他の大人への嫌味付きで。
横で聞いていたクラウは、ティナがやりたいことだけやっていて分不相応な事はしないと言っているように感じ『ティナはやっぱり妖精っぽい』と思った。
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