やばい情報だった 2/2

「ティナ、このことは内緒にした方がいいと思いますわ」

「そうだね。クラウたちにしか言ってないから、今後は注意するよ」

「はい。そのようにお願いいたしますぞ。カーヤ、そなたは狩りの時に、みなの前で魔核を壊したりしておらんか?」

「魔核は解体しないと取り出せないので、後で自室に届けてもらってます。寝る前に自室で破壊してるので、誰にも壊すところは見せてません」

「良かった、なんとかなりそうですな。ベルノルト、おぬしは春から魔獣狩りに参加して魔核を取ってこい。壊し方は教え…いや教えるのはまずいか。ティナ様、こ奴の前で私が魔核を壊した場合、どうなるのですか?」

「その場合は魔素が分配されるよ。正確には、破壊した時の魔核との距離と人数で分配されるの」

「ありがとうございます。教えずともレベルアップはさせられそうですね。皆も魔核を破壊する方法は、絶対に教えてはならんぞ。クラリッサ様、この情報はシュタインベルク家の秘伝として扱いますよう、お願い致します」

「わかったわ」

(俺、魔核を壊すことがレベルアップの条件だって、今聞いちまったんだけど。…やばいから黙っとこう)

「あのぉ、もう一つレベルアップの効果があるんだけど…」

「…ティナ、少し待ってください。スーハー、スーハー。…お、お願いします」

「最近分かったんだけど、レベルアップするとね、身体が年を取りにくくなるの」

「それは……。子どもだと成長が遅くなるということですか?」

「そうみたい。私がちっちゃいままだからおかしいと思って調べたら、身体の成長がかなり遅くなってた」

「……アルノルト、もっとレベルを上げなさい! 成人したら、わたくしも魔獣狩りに参加します!」

「承知しました」

「「私たちも参加希望です!!」」


ユーリアとカーヤは、熱のこもった声をそろえた。

二人は十八歳と十六歳、容姿も運動能力も、ほぼ絶頂期だろう。

これから身体の成長(老化?)が遅くなれば、女性としては万々歳と言ったところか。


「そうよね。許します」

「しかし、これで増々知られるわけにはいかなくなりましたな。権力者共が目の色を変えますぞ」

「そうなるわね。みな、この情報は漏れれば拉致や誘拐の危険性が家族にまで及びます。この情報はわたくしたちだけの秘密として、くれぐれも危険性を忘れることがないように」

「「「「承知しました」」」」


ベルノルトは会話に参加せずに聞いていただけだが、返事には参加した。


ベルノルトは、会話の内容からティナがとんでもないお人好しで、廃村に追放された四人にとって、まさに救世主なのだと感じた。

そして一年前には廃村だったこの場所の今の姿を思い出し、シュタインベルク領にとっても救世主なのだと実感した。

しかもレベルアップの秘密を簡単に教え、ベルノルトの大切な人々を、世間では英雄と呼ばれる超人にしてしまっている。

ベルノルトは、見た目小柄で可愛いこの少女の背に、妖精の羽根が幻視出来る思いだった。


夕食会ではこの一年の思い出話に花が咲き、ベルノルトは廃村追放組のあらましを知った。

話の随所に出てくるティナと妖精の功績。

その度にティナは恥ずかしそうし、身をよじっていた。

最後には『もうやめて! 身体がかゆくなるから!』と叫び、顔を覆った。

参加者たちは、みな微笑みながらティナを見つめていた。

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