スノーボードと箱そり
十二月も半ばを過ぎると、シュタインベルクの領都に雪が積もり始めた。
ティナは学舎の魔法指導の一環で、子どもたちにスノーボードとそり滑りを教えた。
そりはスキー板二枚の上に箱を乗せ、手押し用の持ち手を付けただけのもので、日本の箱そりみたいな形状。
箱そりは本来手押しだが、このそりはスキー板が後部にも出っ張っていて、その上に立って乗れるようになっている。
スノーボードは板の先を曲げただけの、超お手軽仕様。
移動方法は、基本ベクトル系魔法。
荷物無しなら箱に乗り、荷物を箱に乗せた時は後ろに立ち乗りだ。
推進力は、手押しや傾斜利用でもいいし魔法でもいい。
雪が積もり始めて荷物を運ぶ住民が大変そうだったので、ティナが作って妖精商会に並べた。
子どもなら遊びで使い方を覚えるだろうと、ティナは授業に取り入れたのだ。
予想通り大喜びで遊ぶ子どもたち。
たまたま通りがかったカーヤも、一緒になって遊んでいた。
雪が積もって狩りが無くなり、カーヤにも遊ぶ時間が出来たようだ。
しばらくすると大人たちも参加し始めた。
やはり荷物の運搬で困っていたらしい。
売れた。
かさばるので箱そりは十台しか作っていなかったのだが、予約注文が百三十台にもなった。
スノーボードは三百近い予約数だ。
そんな多く作るのを面どく…いや、新しく移住して来た木工職人に仕事を与えるために、ティナは第二城壁内倉庫にあった乾燥済み丸太を低価格で押し付け、木工職人たちに製造販売を頼んだ。
この丸太は第二城壁建造時に森の一部を伐採したもので、大量に余っていた。
いずれ使うだろうと、アルが乾燥してから仕舞われていたものだ。
伐採した木々は一応領主の資産なので、木の販売代金はアルノルトに渡された。
十二月も後半になると領内各所で積雪が増え、流通が滞りはじめた。
領都の積雪は30cmを超え、住民たちの活動の中心は第二城壁内に移って行った。
当初領主館では住民総出の除雪を計画していたが、住民のほとんどが箱そりを使いだしたために、雪があった方が便利だとの意見で、除雪計画は流れた。
今ではちょっとした移動はスノーボード、荷物があるなら箱そりと、積雪が前提の移動だ。
クラウは、サンタのそりのような椅子型そりを使っている。
お供のみなはスノーボードだ。
初期の廃村メンバーはみなレベルが上がっているので、表皮発動型の保温魔法を併用している。
カーヤなどは狩りでさらにレベルが上がっているため、箱そりで旧領都との重要物資配達を、半日でこなせるようになっている。
往復200km近いのだが。
重要物資の配達がカーヤ一人だけだと問題なので、ティナは来年春からのシュタインベルク家使用人の魔獣狩り参加を画策している。
魔核は狩ったものに権利があるからだ。
ティナ自身は自宅に帰るたびに魔核が山積みされていたので、今では魔素切れになる方が難しい。
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