シュタインベルク独立宣言

城塞都市組は謁見の間に移動し、演説内容を相談した後に、クラウが所信表明演説を行った。


公布内容は次の通り。

・バンハイム王国は星の影響病で苦しんだこの領を助けなかったばかりか、今まで以上の上納金を要求してきた。そのため旧シュタインベルク領はバンハイム王国から離脱し、妖精王国所属のシュタインベルク自治領となる。

・今後シュタインベルク領は、妖精王国が建設した城塞都市を含め、シュタインベルク家の正統後継者であるクラリッサ・シュタインベルクが領主を務め、新生シュタインベルク自治領となる。

・領都は、大規模城塞都市シュタインベルクとなる。

・妖精王国の国民は目に見えない妖精であるため、新生シュタインベルク領の領民は『妖精の友民』と呼ばれ、妖精の加護が与えられる」

・上納金搾取に失敗したバンハイムは隣領伯爵家を使って城塞都市シュタインベルクを占領しようと画策したが、妖精王陛下がバンハイムの王城に乗り込みこれを阻止。バンハイムはシュタインベルク領を妖精王国に割譲することを決定した。

・しかしバンハイム国王は国土割譲の責任逃れに嘘の風土病をでっち上げて放棄と言い換え、新たな国境となった隣領との領境を封鎖させた。

・新生シュタインベルク領には風土病など全く無く、バンハイム国王の自己保身のための嘘でしかない。

・新領主就任に当たり、領内の救済を目的に、全ての税を城塞都市シュタインベルクと同じように、バンハイム所属時の半額とする。

・新生シュタインベルク自治領は、妖精王国の支援によりこれまでよりはるかに豊かになるが、バンハイム王国に帰属したい者は、旧領主館に申し出よ。

以上が演説の骨子である。


この演説は新生シュタインベルクの各町や村(町二つ、村五つ)の上空に投影され、謁見の間にいるクラウたちの姿だけでなく、演説の要所要所で各種の説明的動画も流された。


旧領内では、初めて体験する超常現象に、演説が終わっても住民たちは呆然としていた。

やがて隣り合った者同士と語り始め、演説の内容を徐々に理解し始めた。

話し声は次第に大きくなり、身振り手振りが付き始め、やがてはお祭り状態になってしまった。

色々な税が半額になれば、自分たちの暮らしがかなり楽になると理解したのだ。


実際のところこれまでの税は半分が上納金だったが、妖精王国に上納金など不要なため、半額にしても領政は回っていく。それどころか、ドローンによる無償公共工事の支援があるため、領の財政は今までの半額でも潤っていくだろう。


そして、同じ映像が隣領伯爵家上空とバンハイム王都上空にも流された。

王都のどこからでも見える巨大な映像、使者の狼藉と巨大な光の矢、国王と宰相が領土割譲を認めた様子。

王都の住民たちは初めて見る超常現象に驚き、自分たちの国王の醜悪さを嫌悪した。


一方王城では国王と宰相が激怒し、この現象は悪魔によるまやかしとのお触れを出した。

だが、あまりにリアルな空中映像という超常現象に、王都の住民の大半は、お触れを信じようとはしなかった。

結果、国王と宰相の権威は、急速に失われて行った。


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