…やり過ぎたかも
五月半ば。
移住者たちも新都での生活に慣れ始め、新都に平穏と笑顔が訪れたころ、旧都と隣領の派遣部隊は悲惨な目にあっていた。
※不衛生な表現あり
まずは伯爵領からの派遣部隊の多くの兵が、旧都を目前に下痢を発症。
我慢できずに草むらに駆け込む兵多数。
何とか旧都に到着するも、トイレが足りずに街中の物陰で用を足す兵が続出。旧都内に悪臭が立ち込めた。
今回の派遣部隊の糧秣は子爵持ちとなっていたが、量が少ない上に質も悪かったため派遣部隊に不満が蓄積した。
派遣部隊は旧都で二日間療養したが、その間に住民や子爵領領兵から妖精の祟りを聞く。
士気がさらに低下した派遣部隊だったが、指揮官の子爵と子爵領領兵五十と共に、なんとか旧都を出発。
だが、また下痢を再発する者が続出。
子爵領領兵も下痢を発症し始めた。
我慢出来ずに草むらに駆け込む者が続出し、隊列はバラバラ。
何度か休憩を挟みつつ進軍するも、今度は指揮官である子爵が下痢を発症。
指揮官不在で行軍する訳にもいかず、その場で野営に入った。
その夜は悲惨だった。
眠っていても腹痛で目が覚め、野営地の近くで用を足す。
野営地には悪臭が立ち込め、中には衣服を汚すものまで出始めた。
翌朝、あたりに響く妖精らしき笑い声。
悪臭と睡眠不足、自身も下痢に悩まされ、さらには妖精の仕業を想起させる子どもたちの笑い声。子爵は旧都への帰還を決めた。
帰還の行軍もひどいものだった。
もはや隊列など無く、街道横で用を足す者、ふらふらと街道を歩く者、中には草むらに座り込んで動かない者までいた。
やつれた表情でバラバラに旧都に帰り着く兵の悲惨さを目の当たりにした町の者たちは、妖精の祟りを確信し始めていた。
そして二度目の侵攻は行われなかった。
子爵自身も怯えてしまっていたが、領兵や派遣部隊など、侵攻を考えただけでストレス性の腹痛がする有様だ。
結局、派遣部隊は旧都の食料を浪費しただけで、多大なマイナス成果を残して伯爵領に帰って行った。
【作戦の第一段階は、見事にクリアされましたね】
「そうだけど、こんな作戦は二度とやりたくないよ。自分が汚れちゃった気がするもん」
【おや、想定通りの結果では?】
「そうなんだけど…。兵士の表情見たら、自分が悪魔に思えて来たよ」
【随分と可愛らしい悪魔ですね。魂一つ要求しないどころか、旧都でこっそり整腸剤まで飲み水に混ぜてます。私の作戦立案なら、戦闘の末に全員重傷ですよ】
「なんか罪悪感が酷いんだよ。この件は、クラウに結果だけを簡潔に報告するよ」
【そうですか。お手本にしたい作戦だったのですが、残念です】
「……」
クラウに報告した後もしばらく落ち込んでいたティナだったが、日々の忙しさに流され、やがて元気を取り戻していった。
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