廃村再生
そして三か月が過ぎた。
季節は春を迎え、廃村はもはや当時の面影は全く無い。
家の戸数は少ないが、道はきれいに整備され廃墟は取り壊されている。
再利用出来る石材は一か所に積み上げられ、移住者に使われるのを待っている状態だ。
畑も春まきの小麦が蒔かれ、移住者が二十人までなら年間のパンを賄える広さになっていた。
小麦の種は、アルが少量入手したものを大量合成してくれた。
そしてこの村の目玉、小麦畑と同等の広さを持つ甜菜畑。
アルが自生するビートの中から糖分を多く含んだものを選び、去年の内に種を収穫して大量合成していたのだ。
元々はティナの収入源の一つとして用意されていたのだが、販売方法の難しさからお蔵入りになっていた物を放出した。
村の外には豚舎、牛舎、鶏舎が並び、村の中に貯蔵用の氷室も用意してある。
村共有の大型倉庫には腐葉土と骨粉が積まれ、多くの農機具も収められている。
村を守る城壁は全周2kmもあり、廃村の四倍の敷地を堅牢に囲っている。
しかもこの城壁、上部が通路で内部には部屋や倉庫が作られている。
部屋はカプセルホテルのように狭いが、兵士五百人が寝泊まり出来る仕様だ。
クラウたちが住む屋敷も、当然新築した。
村を流れる川を浚渫した上で石積みで護岸工事し、村の中央部だけを池のように拡張して池の中央に島を作り、そこに五階建ての砦を建てた。
形状はアレクサンダー要塞のような楕円形だ。
決して村などとは呼べないあまりの規模に、クラウたちは当初やり過ぎだと止めていたが、ティナが近くの森に魔獣が多いから春までに対策しなければと作業を強行したことで、今はもう諦めモードだ。
いくら止めようとしても、勝手にどんどん整備されていってしまうのだから。
そしてティナは、手紙の配達も請け負った。
春になったので、移住者の第一陣を呼び寄せるのだ。
移住者を迎え入れるため、村、いやこの都市の名前も決めた。
『城塞都市シュタインベルク』
クラウが正当なシュタインベルク家の当主であることを示すため、あえてこの名を付け、呼称も新都に改めた。
そして以前の領都は旧都と呼び、新都と区別することにした。
決意を新たにした四人は、旧都への道が通る近くの森で狩りを始めた。
新都や街道の安全性向上と食肉確保のために、魔獣と野生動物を狩る日々。
アルノルト以外狩りは初めてだったが、レベルアップした身体能力とティナから伝授された魔法で、大きな問題は起こらなかった。
ティナは朝、工房に出勤して二人のメイドにポーション作りを教え、クラウはアルノルトを講師にお勉強。
午後はみんなで狩り&薬草採取。
早めに新都に戻り、移住者用の住居を妖精(ドローン)と共にみんなで魔法建築。
そんな生活に慣れたころ、移住者の第一陣がやってきた。
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