もっともっと手助けしちゃおう

こうして始まった文通。

ティナは自分が人間であることを伝え、友達になって欲しいと書いた。更には『私だけおいしい食べ物食べて新しい服を着てぐっすり寝てるのは嫌』と、半ば強制的に色々な物資を送った。


手紙をやり取りする中で、クラウ(クラリッサの愛称)が魔獣の襲撃を心配するので、みなのレベルを上げるべく、弱い魔獣の魔石から徐々に強い魔石を送っていった。魔核の破壊方法も添えて。

さらにティナは廃村近くまで行き、森の魔獣をこっそり狩っていた。


身の上話では親の理不尽さを貶して盛り上がり、ティナは家が没落して処分されそうになったことを話した。

クラウの家(地方の田舎領主)の場所も分かり、ティナはアルに頼んで情報収集もしてもらった。

その結果、クラウの実家シュタインベルク子爵家では、クラウたちが既に死亡者扱いされていた。

当然、春になっても迎えは来ない。


また領地内ではインフルエンザが蔓延し、死者が相次いでいることも分かった。

しかも領主館でもインフルエンザが猛威を振るい、当主はあっけなく死亡。

クラウの追放を言い出した継嗣の兄も、命は助かったものの脳症の後遺症で認知機能の低下と運動麻痺が残った。


結局子爵位はクラウのはとこが継いで領主になったが、はとこの家は爵位も持たぬ傍流の末端貴族。

はとこはほとんど平民に近い立場だったため、領運営の知識など皆無。

しかも『領主は平民から税を搾取して贅沢をするもの』という偏見を持ち、まともに領運営もせずに圧政を敷いているようだ。


この状況で直系のクラウがのこのこ出向けば、はとこは爵位をクラウに返還しなければならなくなる。

棚ぼたで爵位が転がり込んだはとこにとって、すでに死んだことにされていたクラウが邪魔になるのは当然で、はとこの性格からするとクラウは暗殺される危険性が高い。


この情報を聞いたクラウと使用人たちは、ある決断をした。

今いる廃村を復興させ、シュタインベルク家の正当後継者として、圧政に苦しむ住民をひそかに呼び寄せるのだ。


目標は大きいが、たった四人では成せるはずがない。

そこで、最初は信頼のおける親類や知人数家族を呼びよせることになった。


当然必要になるのは住居と食糧。

クラウたちは開拓民のごとく畑を作り、家を建てようとしていた。

だが、たった四人でやるには何年もの時間がかかる上に、持参した食料は春までしか持たない。

そこでアルが、大型作業ドローンによる廃村の再生をティナに申し出た。


アルはクラウを頂点とした村が出来れば、ティナが移住しても問題無く受け入れられると考えたのだ。

ティナはこれを了承し、クラウたちに秘密厳守を対価にした廃村再生計画を打ち明けた。

アルの存在を隠すため、アルの力を妖精の助力と置き換えて。


だが、クラウたちは意外な事に難色を示した。

今でさえティナに甘えているのに、これ以上負担を掛けるのは申し訳ないと言うのだ。


協議と説得の結果、大型作業用ドローン二機だけを派遣することになった。

このドローンは二機ともインビジブル機能を備えており、視認はされない。

つまり魔法のように、家や畑が勝手に出来上がっていくように見えるのだ。


そしてクラウには、二体の上位妖精を派遣すると説明した。

アルとティナの当初の計画では、春までに廃村を完全に再生する予定だったが、春までに住居と畑を最低限整備するにとどめ、残りは増えていく人が人力で行うことになったのだ。


こうして廃村再生計画はスタートした。


アルは早くからティナに移住を進め、村にティナ用の住居を作った。

この住居はこの世界の一般的なもので、森の中の自宅ほど住環境は良くないため、ティナはここを通いの工房に位置付けた。


そしてティナは、クラウたちと対面を果たした。

いきなり様付で呼ばれ全員に跪かれたのには驚いたが、何とか説得して愛称呼びにしてもらった。使用人たちは愛称に様付のままだが。

ティナは森の自宅から毎日ここに通い、クラウたちに魔法や薬、ポーションの作り方を教え始めた。

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