第2話疑惑

プルルル、プルルル。


家電が鳴る。

「はい、もしもし」

「おはようございます。昨夜お電話しました、愛知県警の黒井川と申します」

「なんで、警察が私に電話するんですか?」

「えぇ〜と、ブリュヴェールさん。先生と共同執筆されている、ブリュヴェールさんが倒れられました」

「いつ?」

「昨夜です」

「ヘビースモーカーだったからなぁ」

「この後、お迎えに参ります。色々、お話がありますので」

「分かりました」


電話を切った、羽弦はどうしてこんなに早く警察が発見したのか、分からなかった。

ちゃんと確認した。ブリュヴェールは吐血し、痙攣していた。

確実に殺したのに、誰が通報したのか?

うちは、アシスタントは居ない。


ピンポーン


インターホンが鳴った。

準備を済ませていた羽弦は玄関ドアを開いた。

そこには、腹の出た中年男性と若い男性が立っていた。

「おはようございます。先生。私は愛知県警捜査一課の黒井川で、この隣が」 

「川崎と申します」

2人は挨拶すると、3人とも覆面パトカーに乗った。


「いや〜、大変ですね。ブリュヴェールさんがあんな形でお倒れになるとは」

と、黒井川警察は何やらメモ帳を取り出した。 

「ブリュヴェールは病死ですか?」

「いいえ。服毒自殺です。黒井川で結構です」

「なんて、馬鹿な事を」

「ま、現場で詳しいことは。しかし、ブリュヴェールさんと先生のミステリー小説の大ファンなんです。良くあんなトリックが思いつきますね」

羽弦はそんな事よりも、何故、警察が事件を知ったのか気になる。


「黒井川さん、誰が警察に通報したのですか?」

黒井川はメモ帳を見ながら、

「えぇ~っと、ブリュヴェールさん本人です」

「……まさか」

「まさかとは?」

「死体が電話出来るはずないじゃ無いか」

「良くあるんですよ。自殺に失敗して救急車を呼んだりするケースが」 


「警部、着きました」

川崎が後部座席の2人に言った。

事件現場に着くと、黒井川は鑑識と話したり、他の刑事と話していたので、羽弦はソファーに座っていた。

「いゃ〜、すいません。こんなものが」

と、黒井川は羽弦に1枚の紙を見せた。

遺書だった。

「遺書ですね。きちんと自筆のサインがあはる」

「昨夜は、先生は何時までこの事務所にいましたか?」

「……昨夜は9時には、帰宅したので、8時位に事務所を出ました」

羽弦は、冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出した。

口の中の水分が飛んでいく。

「じゃ、その後、遺書を書き毒を呷ったんですね」

すると、

「警部、お電話です」

と、川崎巡査がスマホを持ってきた、

「もしもし、ハイ。……はい。そうですか。今から向かいます」


「あ、あの、死んだブリュヴェールがホントに救急車を呼んだのですか?」

黒井川は失敬と言って、タバコを吸いながら、

「……あっ、私、間違えていました。ウォッチです。倒れたり、緊急の場合、腕時計で警備員が駆けつけるんです。すいません」

「そこで、死体が発見されたと」

「……死体?誰のですか?」

「え、ブリュヴェールの」

「何か、勘違いされているようですね」

「な、何を」

「今、病院から電話があって、一命を取り留めたらしいです」

「い、生きてるんですか?」

「私は、いつブリュヴェールさんが亡くなったと言いましたか?」

「あ、朝、遺書を残して自殺した」

「はい。でも、私は倒れた。しか言ってません。先生も一緒に病院へ行きましょうか」

「は、はい。お願いいたします」


その前に、川崎巡査を呼び耳打ちした。

「犯人は、先生だね。あの人、ブリュヴェールが死んだと勘違いしてるのよ」 

「しっ、しかし、こんな状況なら死んだと思っていても不思議ではないじゃないですか!」

「バカッ!不思議か不思議じゃないかは、オレが決めるんだ。ちょっとさぁ、関係者に当たってブリュヴェールとトラブルが無かったか調べてくんないかな」

「ハッ!」

川崎は現場を後にした。

「おまたせしました。先生、病院へ行きましょうか」

「……は、はい」

羽弦はブリュヴェールがどうか死んで下さいと祈っていた。

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