羽弦トリスの犯罪

羽弦トリス

第1話計画殺人

「だから、言ってるじゃない。羽弦君はスポークスマンで、私が殆ど執筆してるんだから、こっちの取り分が多いのは当たり前じゃない!」

と、セブンスターを燻らせながら、喋る女はミステリー小説作家のブリュヴェール(55)。

「オレだって、トリックは考えるし、オレたちが売れたのも、こっちのお蔭じゃないか!」

大声を出すのは同じミステリー小説作家の羽弦トリス(44)。

「じゃ、コンビは解消ね。私は1人書くから。あんたみたいな、おしゃべり好きとは違うんだから。出て、行って!殺したいならどうぞ。そんな、勇気なんてあなたには、ないよね。アハハハハ?」

ブリュヴェールはそう言うとまた、タバコに火をつけた。

胸いっぱいに煙を吸い吐き出した。


ガハッ!


すると、ブリュヴェールはいきなり吐血して、椅子から転げ落ちた。

タバコには、毒薬が注入されていたのだ。


羽弦は、その様子を見届けると、吸っていたタバコの吸い殻を取り出し、まだ、パッケージの中身も取り出して、タバコを自分のポケットに入れて、新しい、タバコのパッケージを机に置いた。


もう一度、ブリュヴェールを見ると痙攣けいれんしていた。

羽弦は、そっと共同事務所からレクサスに乗り現場を離れた。

羽弦は運転中、共同事務所で殺したブリュヴェールとの前後を思い出して、抜けが無いか?復唱していた。事務所は共同だから、指紋があっても、問題ない。

遺書も書いてある。サインは、昔のサインをなぞって書いた。

これで、今後の収益から自分のモノだと確信して、名古屋から離れたスーパー銭湯に向かった。

今夜は、疲れた。

羽弦は、帰宅後、ベッドに倒れ込むように寝て、爆睡した。

家電がけたたましく、鳴る。まだ、夜中の3時だ。

電話に出た。

「はい、もしもし?誰?」

「愛知県警の黒井川と申します」

「明日にしてくれよ!」

「分かりました。また、朝に」

羽弦は困惑した。なぜ、こんなに早く警察が来たのか? 

ま、問題ない。

羽弦は、再びベッドで寝た。



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