第190話 妻たちのいない日

「おーい、ドゴーグやーい」


 暇を持て余した俺はドゴーグのプライベートワールドにやってきたのだが……。


「あん? いないのか……ん? これは……」

 ドゴーグに代わり、置手紙を見つけた。


「神として召喚されて仕事をするからしばらく留守にする、か」

 ……いつもはプライベートだから勝手に来るなとか言ってるくせに、置手紙をしていくだなんて律儀な奴だな。


 先日、ゴッドイーター関連で俺に依頼が舞い込むかもって話を聞いたから、その話をドゴーグにもしようと思っていたのだが……。


「……いないんじゃしょうがないか」





「あ、アレクー!」

「やぁ、エリーよかったらこれから――」

「お嬢様! 今日はこれから御用があると申してるでしょう! 早く行きますよ!」

 我が家に戻り、エリーを見つけたのでおデートに誘おうと思ったのだが……用事?


「あ、そうでしたわ! この後……えっと……」

「お嬢様! 早く! 行きますよ!」

 何だか必死な感じのサリーさんに引きづられるように連れられていくエリー。

 そんなに急いでどこに行くのだろうか?


「あれ、メイちゃんたちは? みんないないの?」

「みなさん用事があるとかで……しばらくは不在のようです」

 唯一そこにいたアンジェが答えてくれる。


「珍しいな、みんないないなんて。しばらくってどのくらい?」

「3日程は留守にすると言っておりました」

 3日も!? 用事があるのは仕方ないけど……。


「そっか……」

 みんな同時にいないなんて……ちょっと寂しい。


 メイちゃんやアラアラはもちろん、クネクネやリオ達もいないようだ。

 ……ミントも。


「もぅ! 私がいるじゃないですか!」

 しまった、さすがにアンジェに失礼だったか。


「ごめんごめん。久しぶりにデートにでも行きませんか、お姫様」

「はい、喜んで♪」


 その日は一日アンジェとゆっくりしっぽり過ごしましたとさ。




「さて……今日はどうすっかなぁ~……そうだ、久しぶりにデールとダンジョンにでも行ってみようかな!」

 2日目、引き続き暇を持て余している俺はデール君と遊ぶことを思いついたのだった!


「デ、デールさんですか……? えーと……」

 何だ? デールは何かまずいのか……?

 アンジェとデールはほとんど面識がなかったと思うけど……。


「……わかりました。私もご一緒したいのでちょっと準備してきます! 待っててください!」

「? うん」

 何だ? 何か含みがあるような……。




「殿下! お待たせしました!」

「おう、突然悪いね……しかし、すごい格好だな……」

 なぜかデールは煌びやかな服装、まるでこれから王族の夜会に出席するかのような服装だ。


「あ、えっと……これは……」

 チラチラとアンジェを見るデール君。

 ま、まさかっ! アンジェへのアピール!? お前にはシアがいるだろうが!


「た、確か今夜ハールト家だけで特別な催しがあるんでしたよね!」

「そ、そうです! だからこの格好なんです! ははは」

 そう言うことか。そりゃタイミングが悪かったかな。


「そっか、忙しいならまた今度……」

「いえ! 殿下にお呼ばれしたならそれが最優先です! ダンジョンですよね! 行きましょう!」

 え、本当に大丈夫? 無理してない?

 無理矢理飲みに誘う上司みたいな感じは嫌なんですけど……。


「いやいや、無理しなくても――」

「いえいえ! 本当に! 殿下にご同行したいとは本当に常日頃思っていますから! ぜひ行きましょう!」

 そこまで言ってくれるなら行くけど……。


「わかった、ありがとう。待ってるから着替えてきなよ」

「結構です! このまま行きましょう! ちょうどこの服装でどの程度動けるか確認したかったんですよ!」

 ほんまかいな。まぁ俺はいいけど。

 それよりも気になることが1つ……。




 なぜ、アンジェはデール君の今夜の予定を知っていたんだ……?



 その後、無事にダンジョン探索を終えた俺たち。


 いやー、デールも強くなったなぁ~!

 S級であるヘカトン先生をナイツなしで倒せていたし、ボスもナイツと一緒に完封勝ち!


 きっとパーシィたちを守る傍ら、必死の訓練を積んでくれていたのだろう。

 これからは彼ともまた一緒に冒険に行きたいものだ。


「今日はありがとうございました! 久しぶりにご一緒できて楽しかったです!」

「こっちこそありがとね! また一緒に行こう!」


 この後ハールト家で用事があると言うことで急いで帰るデール君。

 やはり悪いことをしてしまったか……?


「私も一緒に行けて楽しかったです!」

 今回は珍しくアンジェも同行した。


 幼少期エリーと行った時のように、俺がアンジェを守りながらデール君に先頭を任せるスタイル。

 とても懐かしい気持ちにさせられた。


「アンジェもありがとね」

「いえいえ! 私はあなたの妻ですから! ずっとお傍にいますから!」

 うん? 何か……言い方に違和感が……。

 そう思っていると――。


「アレク様! 大変です!」

「クワト! 久しぶりじゃないか! どうしたんだ?」

 クワトと久しぶりの再会。

 それを喜ぶ間もなく、焦った様子のクワトから衝撃の発言が飛び出す。




「反乱です! セイスさんが……セイスさんがアレク様を裏切りました!」

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