第183話 ゴルディックとデート②

「さぁ! 次はどこに行こうか!」


 釈然としないまま世界樹の森を後にした俺とゴルディック。

 しもた、ここで爺を置いていくんだったのに……。


「……眷属と言えば、他にはいないの?」

 眷属も永遠を生きるんじゃなかったっけ? 違うっけ?


「おるぞ! 殆どは私と一緒に封印されることを望んだが……唯一この世界に残り、この世界の守護を担うと言ってくれた者がおる!」

「へぇ? そいつはすごい」

 数千年の間、ただひたすらに……律儀なこいつにお似合いの律義さだな!


「で、今はどこに?」

「う~む……それが反応がひどく薄くてのぅ……」

 ぷっ! やっぱり数千年もほったらかしじゃ忠誠心も薄れちゃったんじゃないの? ぷっ!


「お主と一緒にいた娘……何と言ったかの? ほれ、よく眠る子じゃ。あの娘から懐かしい気配を感じたのじゃが……」

「はぁっ!? てめぇぶっ殺すぞ! 何俺のエリーを誑かそうとしてるんだマジでコロス!!!」

「待て待て待て! 沸点低すぎるぞ! あの娘自体ではない! 気配の残滓が感じ取れただけだ! それにあの娘は既にお主の眷属ではないか!」

「うるせぇ死ね――え?」

 ……え?


 眷属ぅ……? 伴侶的な……?

 いやいやいや、今更こいつらがそんな言い回しなんてする訳が……。


「何だ知らなかったのか? お主とあの娘には……それとあの怖い獣人の娘と他にも数人、確かにお主との眷属的繋がりを感じたぞ!」

「……え? えぇ~……?」

 1000歩譲って俺が眷属を持てる立場だとして、メイちゃんやアラアラとはいたしているからわかるけども……。

 エリーとはまだ……いや、さっきのゴルディックとママ鳥さんのやり取りを考えると交わるだけではないんだったな……。


「うむ、気付かぬうちに眷属関係になるとは……それだけ慕い慕われ、愛し愛されておるのだろう」

「……」

 爺にそう言われると何か腹立つな。


「そもそも、眷属関係でなければ……あの怖い獣人の子のような存在は――」

 お前メイちゃんにグチャされるぞと思ったところ、頭上でいきなり次元門が開いた!


「――何じゃ! 敵ぶぁ!?」

「それ以上はダメ~!」

 そこから出てきたのは……我がぽわぽわ女神。

 まさか……ぽわぽわ女神がゴルディックの婆さんか!?


「いたたたた……何ぞ何ぞ……敵ではなかったようだが……そなたは一体?」

 いきなり殴られて尚怒らないこいつ。ヤバい。

 てか敵敵警戒しすぎじゃない?


「それは私から説明するんだったのにぃ~!」

「それ……眷属の繋がりのことか?」

「そうだよぉ~! いつかダァくんを驚かせようと思ってたのにぃ~! ひどいよ!」

 プンプンしてる女神。しかし……。


 何やら重要そうなことを知ってて黙ってた方がひどくね? 何が驚かせようとしてただよ!


「そうだったのか! それはすまなかった! すまんアレク殿、さっきのは全て嘘だ!」

「そうそう! この人の言ってたことは嘘だよ~!」

 ……いやいやいや。


 こいつら、めんどくさっ。


 ◆◇◆◇


「双方に強い親愛の情など相手を思う気持ちがあり、魔法的繋がりを持つことで眷属となる」

 つまり……おセッセは手段としては間違ってはいないが方法はそれだけではないのか。楽な手段ではあるようだけど。


「さらに、その繋がりの強さに応じて眷属は主の性質や能力に応じて様々な恩恵を受けることがある、と」

 なるほどなるほど……しかしこれは……と言うことは……?


「そうだよ~! だからメイちゃんは特別な才能はなかったけどあんなに怖く……強くなれたし、エリーちゃんの才能もヒトの限界を超えた能力になったの~!」

 なったの~じゃあねぇんだよなぁ……。

 何でそんな重要なことを今まで教えてくれなかったのか……マジで驚かせたかっただけだったら一発殴る。


 それと! お前らメイちゃんを怖いとか言い過ぎ! メイちゃんに代わってグチャするかんな!

 てかそのメイちゃんとポワンは殴り合ってたじゃないかよ! と思ったけど、こいつも大概だったわ。


「もちろん、メイちゃんたちだけじゃなくて他にも……例えば、『トロイア』や『おうまさん』たちもみんなそうじゃない? 周囲と比べても様々な分野ですごいでしょ~?」

「確かに、ウーノの変身能力とかすごいかも。セイスも何かヤバい」

 最後のトロイアメンバーのシンに至っては、最早どこにいるかすらわからない。


「そう言うこと~! まぁ、特にエリーちゃんは才能と相まって……凄いよね!」

 凄いよねって……語彙力をお忘れですよ!


「って……エリーの才能……」

 俺が勝手に聞いていいのか……しかし正直気になる。良くわからん魔物とも意思疎通取れて来たし、魔道具たくさん使いこなして来た彼女の才能……。


「いや、やっぱりエリーに聞いてから――」

「『魔素理解』、魔素の扱いだけだったらダァくんより凄いよね~!」

 ……言っちゃった聞いちゃった。

 まぁ、その辺かなとは思ってはいたけど……。


「どのくらい主からの恩恵を受けられるかは思いの強さと過ごした時間によるからな! お主らの関係はまるで私と婆さんのようなラブラブっぷりだ!」

 ずっと喋りたそうにうずうずしていたゴルディックが遂に口を開いたと思ったら糞みたいなことを言いよる。


「ね~! 正直羨ましいなぁ~……」

「……まぁ、悪い気はしない」

 嘘です、悪い気がしないどころかめちゃくちゃ嬉しいです!




「ね、だから……私も眷属に……してくれますか……?」

 ……え? そういう流れでしたっけ?

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