第11章 笑顔

第182話 ゴルディックとのデート①

「責任……取ってくれないか……?」


 ゴルディックである。

 確認しておくが、爺である。


 3メートルを超す巨体、そして強靭な筋肉。

 その厳つい爺が……少し自信なさげに、そして甘えるように言ってくるもんだからたまったもんじゃあない。


「何だっけ……? いかにお前を苦しめていたぶれるかって話だっけ?」

 違うのはわかっている。わかっているが、言わざるを得ない。


「違うぞ! 帰り道がわからなくなって困ったからしばらく暇つぶしに付き合ってくれって話である!」

「……はぁ?」

 帰り道? 召喚したんだからそのまま帰ればいいじゃないの……。


「お爺さんや、お家がわからないんですか?」

「うむ、その通りなのだよ」

 う~ん、神も呆けてしまうことがあるんだなぁ~……。


「お爺さんや、私とあなたは初対面ですよ? 頼む相手を間違えているんじゃないですか?」

「間違え取らんわ! それと呆けとらんわ!」

 チッ……呆けてるついでに誤魔化そうとしたが失敗したようだ。


「知っての通り、私は数千年単位で寝ておったから私の世界への道を複雑化かつ他から見えないよう厳重に封印していたのだ。無防備な姿を敵に晒す訳にはいかないからな」

「へぇ~」

 世界への道を複雑化……そんなんことできるのなんて初めて知ったわ。

 しかし敵から逃れるために家を隠して、それで自分もわからなくなっちゃうなんて……。


 さてはこいつ、とんだうっかり爺だな……?


「そして寝てる間に強制的に召喚されて……完全に道がわからんのだ! 故に責任を取ってもらいたいのだが……」

「嫌だよ! 別に俺じゃなくても……他の人に召喚されたら同じようなことになっただろうし、そんな甘い対策していたお前が悪い」

 ゴルディック程の知名度であれば教会の誰もが一度は喚ぼうとしたことくらいあるだろうし。


「……言っただろう、厳重に封印していたと。なぜあの状態で召喚できたのか不思議でならないが……」

 あー、確かにめちゃくちゃ重かった的な。


「さらに……消費された魔力に応じて滞在期間も伸びるから……私はいつまでここにいることになるんだ?」

「……」

 知らねぇよ! 知らねぇけど……あれから2週間近く経ってるのに未だゴルディックが顕現してるのはなぜかと思ったら、そう言うこと?


「今までゼア殿の補助と助言で忙しかったから気にならなかったけど……割と困っておる!」

「……だったら、召喚されたところに行けば?」

 残滓的な何かが残っているでしょう?


「影界とこちらを繋ぐ規模の次元門なら兎も角、私の召喚痕などとっくに残っとらんかった……」

「……」

 そんなに厳重にしてるんだったらまず最初にそこを気にしとけよ!


「多分……そろそろ婆さんが私の不在に気付いて探してくれるとは思うのだ……それまでどうか面倒を見てくれんか……?」

「……えぇ~……」

 それって……もし婆さんが気付かなかったら……?


「恐らく……すぐだから……」

「……」

 ……うっかりなのか呆けてるのか、いずれにしろめんどくさい爺だ……。


 ◆◇◆◇


「ま、まさか……創造神様……!?」




 長い間寝ていたから久しぶりに世界を見たいと言われたので、まず連れてきたのは世界樹の森。

 律儀に連れて来た理由は……ここで適当にはぐれてさよならしようと思ったからだ! 悪いな爺!


 なんて思って来たら……ママ鳥さんが爺を見て驚いている。

 もしかして、ママ鳥さんが婆……?


「お主はカラドリウスのカラアゲか!?」

 うわっ! ひでぇ名前!


「カラアゲは10代前のご先祖様です。私はその子孫のカラメルと申しますわ、創造神様」

「なんと……あの長生きすると言われたカラアゲの子孫が10代も……」

 長い間寝てましたね。知らんけど。


「えぇ……数千年前の長い時の間、私たちの一族はこの日をどんなに待ちわびたか……」

「……すまなかった。そして本当にありがとう。あれほど弱々しかった世界樹がこんなに……うぅっ……」

 大号泣するゴルディック。


「いえ、創造神様から受けた恩に比べればなんてことはありませんから……」

「カラアゲ……いや、カラメルよ……! 何とお礼申し上げればいいのやら……! 何か私にできることはないか!?」

 そう言えばこいつこんなんだった。暑苦しいと言うか律儀というか。


「……では、よろしければ私をあなたの眷属の末席に加えて頂けますか……?」

「うむ! うむ! こちらからお願いしたいくらいだ!」

 おい騙されるなよ! 雰囲気は超絶美女だけど実態はただのオカンだぞ!


「ではこちらへ頭を差し出してくれ……ぬぅん!」

 と思っていたら……ママ鳥さんの頭に光る手をかざし、何やら力を込めるゴルディック。


「あぁ……ゴルディック様……永遠の忠誠を捧げます」

「うむ! これからもよろしく頼むぞ!」


 ……え? 終わり?

 これからおセッセするんじゃなかったの?


「……(ニコッ)」

「……」

 意味深に笑うひよこに呆然と見つめ返すしかできない俺。




 マジかー……。

 リオとの騒動は……一体何だったのだろうか……。

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