第173話 一番嫌い
「断ち切れ、ヴァイス・アンファ」
口の中へと放り込まれる瞬間、触手を切断する。
もう見てらんない! 魔族は敵とかどうでもいいわ!
このまんま何もしなかったら! 寝て起きたら絶対後悔しそうだもの!
アンファも呼応するように勝手に輝き出す!
「え? え!?」
まさか俺に助けられるとは思いもよらなかったのであろう。
呆気にとられているロべニスをゼアの方へと投げつける。
「きゃっ!?」
「――っ! な、なぜ貴様が……!?」
そうね、そこが問題だ。
「やれやれ、己を慕ってくれる女性も守れないとは……情けない奴め!」
「ぐっ……」
とりあえず煽ってみる。じゃなくて……まぁ、気まぐれだよ。
「『不滅者縛る不滅の鎖』!」
魔素を吸収して強化していく鎖を魔神に巻き付け、拘束する。
早速鎖の魔力が食われているが少しの間なら大丈夫だろう!
「魔神を止めておけ! 俺は――」
言葉を途中で切り、トージョーに斬りかかる。
こいつだけは許せん!
「甘いっ!」
未だ支配下にあるフェインドを盾にするトージョー。
「甘いのはお前だっ!」
フェインドの右腕を切断する!
「――っ!?」
「フェインド!? やめてよっ!」
ロべニスが悲鳴を上げるが、当の本人は歯を食いしばって耐えている!
「俺が! 敵だったやつに容赦するとでも!?」
「……ははっ! 本当に容赦ないね! それでこそ『悪』だ!」
悪でも何でもいいわ!
「オラオラオラオラ!」
続けてフェインドの左腕を、右足を、最後に左足を切り落とす。
これでフェインド達磨の完成!
どうだ! これで……!
「――あ、りがどう……」
「……礼などいらんよ」
結局1度も悲鳴を上げなかったね。
安心しなよ、綺麗に治してやるから。
「酷いよ! いくら敵だからって! フェインドは操られて――」
「ほれ、邪魔だからさっさと抱えて行ってくれ」
ついでに止血だけしといてやろう。
ィユニスがやっていたように魔力で包み込んで……。
「――っ! かたじけない!」
リィジーンがフェインドを抱え、他の仲間の方へ向かう。
「……どうしたんだい? 魔族は敵じゃなかったのかい?」
「義を見てせざるは糞野郎、つまりお前こそが糞野郎ってことだ」
意味が分からないだろう? 俺もだ!
この……心から来る怒りは! 訳が分からん! 魔族は敵だって言うのに! 倒すべき敵だって言うのに!
本当に倒すべきはお前だって! 俺の心が! 叫ぶんだ!!!
「……ふぅん。まぁいいよ。『支配』! どうだ! これで君は僕の物だ!」
「……」
何も言わずに歩いて近付く。
「ゼアから聞いてるよ。君はとても強いって。そんな君が僕のもびゃっ!?」
「……」
そして何も言わずに顔面を思いっきりぶん殴る。
「――え?」
「……」
もう一発オマケで殴ってやる。 歯が数本折れて男前になったじゃない。
「な、なんでだっ!? なんで『支配』が効かないんだよぉっ!」
ちょっとイラっとしたくらいで正直全く効かなかったんだが。
「効くわけないだろうお前の魔法なんか! 碌に努力もしないで他人の手柄を横取りしてばっかの卑怯者めっ!」
「卑怯!? 僕のどこが卑怯だって言うんだ!」
「ゼアたちは本気で! 仲間のために本気で戦って来た! 見ればそんくらいわかる! お前は彼らの努力を! 成果を横から掠め取ろうとしてるだけだろうが! それを卑怯と言わずに何と言う!」
本当に! 本当に腹立つ! 全部仕事はこっちにやらせといて結果が出たら手柄は全部横取り!
「俺はそういうやつが一番大っ嫌いなんだよっ! 黙って死ね!」
「ぎゃぁっ! ぼっ! 僕の右腕がぁ~っ!?」
身体強化を限界まで上げ、トージョーの右腕を粉砕する。
「お前が奪おうとしたフェインドの努力! その苦しみを味わえ!」
「痛いっ! 痛いよぉっ!」
フェインドの時と同じように四肢を順番に破壊していく!
「何でぇっ!? 何で僕がこんな目にっ! たすっ助けてぇ~ママぁーっ!」
「うるせぇっ! 死ねっ!」
最後に全力で顔面を殴りつける。
「ぁ……が……」
地面に叩きつけられ、ぴくぴくと体を震わせるトージョー。
「ぼ……ぼくは……正し……ぃ……」
「……だったら、『支配』なんて才能貰うなよ」
完全に動かなくなったトージョーを見下ろし、最後に呟く。
他人を自分の思い通りにする能力。
そんなものを選んだ時点で碌なことにはならなかっただろうに。
「ま、もう関係ないか!」
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