第169話 おうまさんのリバイバル①

「ちょっと待ってぇ~!」


 今にも戦いが始まると言う緊迫感、それを払ったのは気の抜けるようなアラアラの声だった。

 突然の出来事に、虚を突かれ固まるおうまさん以外の面々。もちろん俺も。


「魔族の王、ゼアよ。我々と戦って貰おう!」

「俺っちたちの雪辱戦に付き合って貰うぜ!」

 ブッディとヤハが戦場に割り込み、ゼアに対して戦いを挑む。つまり、タイマンしろってこと!?


 いやいやいや! 気持ちはわかるけども!

 そんな雰囲気じゃないでしょこれ!


「貴様ら、『おうまさん』か? 気持ちはわからなくもないが……」

 チラッと俺を見るゼア。

 そんな場合じゃないでしょうと言う意味を込めて頷きを返す。


「ふむ、いいだろう。全員待機! 手を出す必要はない!」

「なっ!?」

 んでやねん!


「この勝負引き受ける代わりに条件がある。我が勝ったら、お前の持つクリスタルを寄越せ」

「……」

 あー……そう言うこと? 俺には勝てないからってそんな条件つけなくても!

 いやしかし……俺のクリスタルはトージョーが持っているのでは?


 ……ふむ。


「了承した。『おうまさん』の思いを汲んでくれたこと、感謝しておくよ」

 本当は持ってないなんて口が裂けても言えないけど!


「不要だ。現界に生きる者からの感謝などな!」

「『フェニックス・ケージ』!」

 その言葉が開戦の合図となったのか、シヴが魔法を周囲に展開する。


「ふむ、範囲に入り込む敵を燃やす魔法か。腕を上げたようだな。魔力の制御が以前とは段違いだ。貴様、名は?」

「シヴマーヌ。貴様に破滅をもたらす者」

「俺っちを忘れてない!?」

 2人の間に割って入るヤハウェーイ。


「甘いわっ!」

 ゼアの手刀がヤハを貫いた!


「ちぇっ、やっぱり堅いなぁ……」

「――なっ!?」

 しかし貫いたヤハは幻覚のように消え、逆にゼアが首に一筋の切り傷を負って血を流す。


「『陽炎パーティ』。どんどん盛り上がっていこっ☆」

 その言葉と同時、何人ものヤハが現れる。


「これは……幻影か!?」

「せ~いかい! 持つべきものは頼れる仲間☆」

 幻術の得意なトロイアの仲間、ドスとトレスに頭を下げ、特訓を重ねていたヤハ。


「――っ、確かに以前よりも強くなったのは認めよう! だが……それでも届かんぞ!」

 ヤハは確かに敵を翻弄し、ゼアに短刀での攻撃を食らわせている。

 しかし、それは薄皮を切り裂くものでしかない。


「言ったっしょ! 持つべきものは頼れる仲間!」

「『黙示録の焔』!」

「ぬっ!?」

 かつて大したダメージを与えられなかったらしいシヴの極大相当の魔法。

 しかし今回は――。


「――ぐぅっ!」

 相当の痛手を負わせたようだ!


「……なかなか効いたぞ」

 ところどころ炭化し、肩で息をするゼア。


「しかし……それでも我には勝てまい!」

 そう言いながらも、傷を負った腕や足を切り落とす。


「なっ!? なんてグロい……★」

「何も分身するのはお前だけではない!」

 その言葉と同時、切り落とされた腕や足がゼアの姿に変形する!


「ふははははっ! 我が才能(ギフト)、『超回復』! それを応用して分身体を作り上げる! 貴様のそれとは違って実態があるぞ!」

「んなバカな! そんなのありっ!?」

 ゼアを見ると、分身体に守られながら腕や足、それに火傷が徐々に回復しつつあった。


「ゆけっ!」

「……」

 分身体の1人がシヴに向かって行く!


「『金剛・改』!」

「……!」

 それを難なく受け止めるブッディ!


「魂籠らぬ分身体など、とるに足らぬっ!」

「そうみたいだね☆」

 ブッディが止め、ヤハが細切れにする。


「『黙示録の焔』」

「「……」」

 そして残りの2体もろとも、シヴが焼き尽くした。


「なるほど……分身体では相手にならぬ、か。いいだろう、我の本気を見せてやろう!」

 既に体を回復させたゼア、今までのは遊びだと言わんばかりに全身をに魔力を滾らせる。


「おっおっおーっ!? これは無理っ! 無理っ! さっきまでのは全然本気じゃなかったのかよっ!?」

 先程までとは比べ物にならない魔力を纏うゼア。


「当然だ。我と再戦したい気持ちを受けてやっただけ――」

「アラアラ! もういい! 下手したら死ぬっ!」

 それまで支援魔法に徹していたアラアラに、ヤハが必死になって何かを求める。


「拙僧たちの修行の成果は見せることができた」

「本気を出すのは俺たちもってね☆」

「新たなる創造の始まり! いざ往かん! ニルヴァーナ!」

 だ、大丈夫なのか? ゼアの纏う魔力は尋常じゃない程に膨れ上がっている!


「それじゃあ……いっくよぉ~!」

「――っ!?」

 アラアラが行使しようとしている魔法、それを見て焦ったように発動を止めようとアラアラに迫るゼア。


「邪魔だっ!」

「させぬわっ!」

 しかしブッディがそれを妨害する。

 そして――!




「『尊主光輪しゅきしゅきアレクちゃまの輪っか』」

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