第165話 リオの実力
「『次元門』!」
恐る恐る魔力を込めていきながら、次元門を開いていく。行き先は……ドゴーグのところでいいか。
「なぁに、わらわに全て任せるのじゃ。主様はわらわの背中でゆっくりしておるがいい」
何だよ、リオのやつ。こんなに包容力のある奴だったのか?
それに何だか……リオが愛おしく感じてしまうのだが……?
ちょっとやめろよ! こいつとはそんなんじゃっ!
「……リオも無理するなよ」
……そんなんじゃ、なかったはず……。
なのに――。
「大丈夫じゃ。主様を想えば千人力じゃからの」
「……」
たまらなく愛おしい……まるで……。
「ほれ、もういいじゃろう。以前の次元門と同じくらいじゃ。多分」
その言葉に次元門を見てみると、ドゴーグがひょっこり顔を覗かせているところだった。
全然可愛くない。
「おうドゴーグよ! すまないな、ちょっとそっち借りるぞ!」
「……貴様、今度は一体――」
「来たぞ! 主様!」
その瞬間、大地を揺らし大気を震わせながら巨大なエネルギーが下の方からせりあがってくるのを感じる!
まるで海その物が沸騰するかのように大量の泡を爆発とともに吐き出す!
「っ!? 暑っ! 『快適空間』(マインスペース)!」
サウナのような、しかしそれとは比べ物にならない程の高温の蒸気が上昇してくるのを感じ、慌てて空間維持の魔法を唱える。
宇宙空間よりはましだが、それでもガンガン魔力が使われているのがわかる。
「――っ!?」
そしていよいよ海面を突き破り、上空にいる俺たちのところに向かってマグマが噴出してきた!
「グルォォオオオーンッ!!!」
リオが雄たけびを上げ、マグマに向かって強烈なブレスを吐き出す!
「主様に牙を剥く愚か者よ! 我が……龍の力! 思い知るがよい!」
すっご……以前見た時のブレスとは段違いの威力。
マグマの噴火を彷彿させるようなボルケーノの突進を跳ね返しやがった!
「キュィィィーン!」
リオのブレスによって海へと落とされるスライム。
やつの声なのか、クジラが発する音波のようなものが周りに響く。
「すごい! 力が漲るのじゃ! これが……愛の力なのじゃ!」
確かに、先程のブレスはすさまじかった。
リオの奴、いつの間にこんな強くなったんだ?
「さぁ、どんどん来るのじゃ! 我が力、こんなものではないぞ! ……ない、ぞ……」
急速に勢いを無くすリオ、その視線の先を見てみると……。
「キュィィ……」
煙を上げる赤黒い小島が出来上がっており、その上をぺちぺち飛んでる丸っこいモノ。
どう見ても、先程までの強さは持っていない。
「……え、もう冷えたの?」
「何じゃ!? どういう事じゃ!?」
「いやぁ、マグマが敵だったら、冷ますのがいいかなって。だから海で試してみたんだけど……」
こんな早く固まるとは思わなかった。
「……わらわの活躍する機会は……?」
「うん、終了!」
ガクッと肩を落とすリオ。
「まぁいいじゃないか、当初の目的は達成できた訳だし! それに……」
「……それに?」
何だ、やっぱり何かがおかしい。どうしてこんな気持ちになるんだって!
「……リオが傷付かなくてよかった」
「――っ! そうじゃぞ、わらわに傷をつけていいのは……いや、主様、愛してるのじゃ」
「……我は何を見せられているんだ?」
「キュイ!」
◆◇◆◇
その後スライムをドゴーグのところに放り投げ、我が家へと帰還した俺たち。
「ふぅ……何だか、思ったよりも疲れたな。それに、何というか……」
ところどころ違和感があるのだが……。
「……気にするでない。何があろうとも、わらわが傍にいるのじゃ」
一番の違和感はこれ。
こいつにこんなこと言われても、拒絶感と言うか倫理観というか、そういうものが働いていた気がするのに。
一向に気にならないというか、むしろ嬉しく思ってしまうのだが……。
「坊ちゃま、失礼します」
「しもた! メイちゃん殿! 急いでこっちに来るのじゃ!」
何かを焦ったリオがメイちゃんを引きずって行ってしまった……。
「……何なんだ?」
訳がわからん。もう疲れたし寝よ……。
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