第163話 情報の共有と収集

「やぁ、パーシィ。調子はどうだい?」


 次にやってきたのはクイードァ国。

 その王であるパーシィにもスライムの話をし、手掛かりを探すよう頼んでいたのだ。


「全然です、兄さま」

「そっかぁ~」

 まぁ、正直期待はしていなかったからいいんだけど。


「私の方も冒険者ギルドにある討伐依頼書以上の情報は掴めませんでした」

 そう言って落胆しているデール君。


 実は、彼にはまだパーシィの護衛をお願いしている。

 というのも度重なる王の交代、そして国政が不安定な中、確実に命を狙ってくる輩がいるからだ。

 現に既に何度も暗殺者を返り討ちにしているそうな。


 決して俺が妻たちとイチャイチャするのに邪魔だなぁ~なんて思ったからではない。

 そんなこと考えるだなんて、今まで俺の為に努力してきたデール君に失礼じゃないか!




 閑話休題。


「討伐依頼書、か」

「えぇ。前に現れたのは数百年前、凶悪な魔物を引き連れ出現、辺りを破壊し尽くし近くの小国を滅亡させた凶悪な災害のような魔物。そう記されているのみです」

 うむむ、やはり大した手掛かりは得られないな。


「凶悪な魔物を引き連れ、というのは次元門からやってくる魔物たちのことでしょうかね?」

「そうだろうね。一応、スライムの方はこの魔物を倒すことを使命としているらしい」

 その結果、小国を滅ぼすとは……それでも、そうした方がいいと判断したのだろうか?


「一応、そう言った存在が出現してもどうにかなるように準備はしておきます。ですが……」

「正直王都の中心で出現したらどうしようもないですね……」

 そうだよなぁ~。パーシィを始め、俺の大事な知り合いには『アレクの印』を渡しているから大丈夫なはず。

 ただ、パーシィたちが国民を見捨てて逃げるかと言われると……。


「兄さま、私たちは何があっても逃げだしたりしませんよ。そこに守るべき国民がいる限り」

 ですよね!


「うむ、この兄もできる限りのことはする。だから安心するのだ」

「……ありがとう、兄さん」

 うぐっ! パーシィの笑顔を見てると胸の奥がっ!


「殿下、私も身命を賭して国民の為に命を懸けるパーシィ様とシアをお守りします!」

「うむ、任せたぞ!」


 ◆◇◆◇


「セイスえもん、いる?」


 ハンダート領主館にいるセイスを訪ねてきたのだが……。


「生憎外に出ています! です!」

 迎えてくれたのはヒッターちゃん。


 彼女は冒険者ナンバーワン決定闘技大会に出場していたのだが……何とセイスの心を射止めてしまったらしい。

 何でもセイスが熱心に求婚したそうで……。


 冷静だけど熱い心を持つセイスとしては、まじめで頑張り屋さんなヒッターちゃんを支えていきたいと思ったのだろう。

 確かに何事にも必死で頑張る姿に胸を打たれたもの。


「そっか。付き合いたてなのに忙しくさせちゃって悪いね」

「いえ! セイスさんも苦笑いしながら楽しそうにしています!」

 セイスを始め、『トロイア』の面々にはクイードァのごたごたの処理を頼んでいる。

 ぶっちゃけ死ぬほど忙しそうだ。


「セイスから何か情報があったとか聞いてない?」

「いえ……すみません!」

 国中に散らばっている彼らからも情報がない、か。残念。


「そっか……今度これでセイスと美味しいものでも食べておくれ」

 そう言って金貨数枚を渡す。


「そんな……ありがとうございます! これからも頑張ります!」


 屈託のない笑顔に癒され、領主館を後にする。


 ◆◇◆◇


「まいったなぁ~手がかりが何もない」

「だからと言ってここに来るな。一応、ここは我のプライベートスペースなのだぞ」

 完全に手詰まった感。しょうがないのでドゴーグのところへとやって来た。


「そんなこと言うなよ。俺とお前の仲だろう?」

 主人と奴隷だけど。


「……ふん、まぁいい。どこにいるかわからないのなら、いつぞやのように召喚をしてみたらどうだ?」

 ちょっと! 嬉しそうにしないでよ!


「召喚ねぇ~。考えたんだけど、そのスライムが召喚されるかいまいちわからなくない?」

 固有名詞がある訳でもないし、ボルケーノスライムという種族が複数いたら……さらに、別の世界から来る可能性もある。


「それは……確かにそうだな」

「だろ?」

 倒したと思っていたのが別の個体で……なんてことになると目も当てられないことになりそうだ。


「では、そいつが勘違いするほどの次元門を開いてみるとか。知性のない獣ならば、勘違いして出てくるかも知れんぞ?」

 お? 割といけそうな気がするぞ!


「それいいね! やってみるわ! サンキューな!」

「……うむ」




 若干嬉しそうにしているドゴーグに別れを告げ、元の世界へと戻るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る