第162話 時の流れ
「ってことで、ボルケーノスラりんとやらがどこにいるか知らない?」
リオから教えられたスライム、その居場所に心当たりのありそうな存在の元へとやって来た。
つまり、世界樹の森にいる唐揚げ予備軍。
「ぴよっ! ぴよぴよっ!」
「よーしよしよし、久しぶりのママでテンション上がったのかい?」
うちにいるぴよすけも里帰りついでに連れて来てやった。
いだだだだ、嘴がっ! 頭に刺さってる!
「……アレクさん、お力になりたいのは山々ですが私の活動範囲はこの森限定、彼の者が今どこにいるのかはわからないのです」
左様でございますか。
「そっかぁー。何か手掛かりとかない? そいつの好きな食べ物とか」
「彼の者は我々と違い、知性を持ちません。それ故、ほとんど意志の疎通を図ったこともありませんので……」
マジか。じゃあ本能のままにこの世界を守ってんのか? なかなか善な存在だね。
「知性を持たず、本能的だからこそ次元門がどこに開くのかがわかるのかも知れませんね」
「なるほど」
知性的と言えば、この鳥。見た目はひよこだけど、かなり知性溢れる感じがして……何か、いい。
こう、ボインとした慎ましい淑女の姿が見える。今はひよこだけど。
「時にママ鳥さんや、あなたも人化はできるので?」
「? えぇ、できますが……お見せしましょうか?」
「ぜひっ!」
うっひょー! オラ、わくわくしてきたぞっ!
「はぁ……ではっ!」
そう言って光に包まれるママ鳥さん。
きっと儚げな目をしててボインとしててムチっとしてて――!
「ふぅ……ヒトの姿になるのは久しぶりですね」
そこには……そこには、確かにボインとしてる女性がいた。
ただし全体的に……。
ママってよりオカン。ムチっとしてるハム。否、樽。
某龍の依頼的ゲームのキャラクターで言うとサンチョ。
「さすがですね、魔力の流れに一切の無駄がなく、それでいて力強い」
「ふふ、お上手ですね。この姿になるのも久しぶりです。いかがですか、私と契りを結びませんか?」
人化した影響か、声まで汚く聞こえる。
腐り落ちそうな耳と脳みそを奮い起こし、何とか言葉を紡ぐ。
「はっはっは。私には愛する女性がいますので遠慮させて頂きますよ」
「そう、ですか。せっかく神鳥となる機会だと思ったのですが……気が変わったら、お願いしますね」
そう言って人化を解くオカン鳥。
うむ。
女性を見た目で判断するのは最も愚かな行為の1つである。
私としては妻たちへ操を立てるために断ったに過ぎない。
「ところでこのぴよすけは人化できるんですか?」
「どうでしょうか……こちらにおいでなさい、ぴよすけ」
あ、オカン鳥さんからもぴよすけと呼ばれるようになってもうた。
本名って言うか、エリーたちがつけた名前何だっけなぁ?
確か……ぴよぴよえりー?
「ぴよっ! ぴよぴよっ!」
「えぇ、えぇ。ほら、母と一緒にやってみましょう。なぁに、怖くありませんよ」
目を瞑ってればなぁ~……人化しなければ声はきれいなままだからなぁ~……。
ままならぬものよ。
「さぁ、いきますよ!」
「ぴよっ!」
ぴよすけとオカンが光に包まれる。
どうせ昭和的な丸坊主の男の子がでてくるんだろう? あ、こいつ雌だっけ?
しかし、光が晴れるとそこにいたのは絶世の美女だった。
「……え?」
やっぱりオカン鳥、いやママ鳥さんの真の人化はこっちだった!?
最初に想像した通り、儚げな目、美しい顔立ち、それに加えボインとしててムチっとしてて……。
うっひょー! テンション爆上げっ!
やっぱ契ろうそうしよう!
「って! いたたたた! やめろ! 髪の毛むしるな! 頭突きすな!」
「ぴよっ! ぴぴよぴよっ!」
これまた美しい声でぴよぴよ言ってる絶世の美女。
「まぁまぁ。やはり、私の若い頃の人化とそっくりですね」
「え、これ、ぴよすけ?」
「ぴよっ!」
オカン……時の流れはかくも残酷なり。
「ちなみに、ぴよすけは生後2年ってところです。眷属にしてあげるのはもう少し待っててくださいね」
あぁ、時の流れはかくも残酷なり。
クネクネと全く逆のパターンかぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます